TPSの基本的な進め方4/8

引き続きトヨタ生産方式(TPS)の基本的な進め方です。

基本原則3:後工程引き取り

後工程引き取りとは、後工程が必要なものを、必要な時に、必要な量だけ前工程から取ってくることです。そして前工程は完成品を工程の後ろに置き、後工程が引き取った分だけ生産する。(後補充生産)ことで、ジャストインタイムを実現します。

(1)かんばん

この後工程引き取りや後補充生産に使用される道具が「かんばん」です。

「かんばん」とは、生産や運搬の指示が表された物で、これがジャストインタイム生産を実現する為の重要な管理の道具です。(詳細は後日)

<かんばん>

「いつ」・「何を」・「どれだけ」運搬、生産すれば良いかを指示

「いつ」・・・かんばんの外れたタイミング

「 何を」・「どれだけ」・・・かんばんに記入

(2)運搬

運搬とは、一般的には物を運ぶ行為を指しますが、TPSでは物だけではなく「情報」も同時に運搬すると考えます。

運搬=物の運搬と情報の運搬

これは前工程がいつ何をどれだけ生産すれば良いかという情報を伝える役割を持っているからです。

TPSの基本的な進め方3/8

引き続きトヨタ生産方式(TPS)の基本的な進め方です。

基本原則1:工程の流れ化

必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産する為には、製品を流れとして生産することが必要です。

工程内で考えると品物が一つ一つ次々に工程を進む様に加工していく事でありこれを1個流しと言い、また設備配置の面から見ればライン化ということになります。

また工場全体での物の流れとして考えると清流化ということになります。

②工程の流れ化(基本原則1)

Ⅰ.物の面
(1)1個流し
(2)同期化
(3)停滞をなくす

Ⅱ.人の面
(1)多工程持ち
(2)多能工化

Ⅲ.設備の面
(1)工程順の設備配置
(2)物の流れを整流化出来る設備

Ⅳ.ロット生産工程における小ロット化
(1)段取り時間の短縮

※整流化の為の重要なポイント
・設備の小型化(床面積の制約)
・設備の低コスト化(設備投資額の制約)

基本原則2:必要数でタクトを決める

必要なものを必要なスピードで必要なだけ造る為には、売れの実態を正確に反映した必要数によってタクトタイムを決定しなければなりません。

タクトタイム=日当り操業時間(定時)÷日当り生産必要数

    ※操業時間=タイムカード時間ーホットタイムー4Sタイム

すなわち部品1個または1台分をどれだけの時間で生産すべきかという時間値です。

TPSの基本的な進め方2/8

引き続きトヨタ生産方式(TPS)の基本的な進め方です。

目的:生産のリードタイム短縮

売れる情報に対してリアルタイムに反応し、タイミングよく物を工場に供給する為には、生産のリードタイムをいかに短縮するかが重要な課題です。

<生産のリードタイムとは>

生産のリードタイムとは工場が受注してから、製品の出荷にいたるまでの時間をいう。

生産のリードタイム = A + B + C

A:該当製品の生産指示情報の滞留時間

B:該当製品の材料仕掛けから完成にいたるまでの時間
(加工時間+停滞時間)

C:該当製品の完成の最初の1個ができてから、後工程が引き取る物の完成品が出来上がるまでの時間
(運搬数×製品の生産タクト)

TPSの基本的な進め方1/8

ジャストインタイム

コストを構成する3つの要素として質・量・タイミングがありますが、タイミングよく、良い品質の物を必要なだけお客様に供給する、つまり
「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産し運搬する」ことをTPSではジャストインタイムと言います。

<ジャストインタイムの基本的考え方>

「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産し運搬する」

ジャストインタイムの基本原則として、後工程が前工程へ物を取りに行くという「後工程引き取り」「必要数でタクトを決める」「工程の流れ化」があり、またその前提条件として「平準化生産」があります。

またジャストインタイムを実現する為の工程間をつなぐ動脈や自律神経としてかんばんや運搬があります。

TPSの概論3/3

引き続きトヨタ生産方式(TPS)の概論です。

一般的な製造会社では、下図の様に、内示情報や需要予測を基に見込み生産を行っています。このような生産方式は、工場内の到る所に在庫を持たねばならず、ムダを隠し、結果として原価を押し上げることにつながっています。

生産のリードタイムが確定受注のリードタイムより長い

➡内示情報で生産計画を発行(見込み生産)

➡生産計画が受注と違う為、売れに対して
造りすぎる
欠品がおきる→計画通り造らない

➡各工程に在庫が発生し、ムダを隠す
(造りすぎのムダ)

生産のリードタイムを短縮しなければ、ムダは顕在化しない

TPSの基本的な考え方

TPSとはあらゆるムダを顕在化させ、そのムダを徹底的に排除することによる原価低減活動です。

管理の基盤造り(ムダの顕在化)

管理の基盤造りとして、TPSでは「目で見る管理」を推進してます。

目で見る管理
・作業指示の明確化
・仕事のやり方の明確化
・異常の明確化

生産の基盤造り(徹底したムダの排除)

一般的な生産方式の問題に対して、TPSでは生産のリードタイム短縮を目的とした「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産し運搬する」というジャストインタイムの思想を生産の基盤造りの柱としています。

またもう一つのはしらとして、自働化という思想があります。

そしてそれらを実現する為の前提条件として、生産の平準化を徹底的に行う必要があります。

TPSの概論2/3

引き続きトヨタ生産方式(TPS)の概論です。

ムダの考え方

ムダの定義

ムダの定義・・・「付加価値を高めないもの総て」

仕事の定義・・・「付加価値を高める作業」
(働き)

人についていえば  動きー働き=ムダ

ムダの種類

(1)造りすぎのムダ
(2)運搬のムダ
(3)加工そのもののムダ
(4)動作のムダ
(5)手持ちのムダ
(6)在庫のムダ
(7)不良品、手直しのムダ

この中の(1)~(3)は判りにくいムダであるが、これを見つける目を養うことが大切

造りすぎのムダ

ムダの中で最も悪いといわれているのは、「造りすぎのムダ」であります。
この造りすぎのムダはその工程の問題や他のムダを隠してしまい、また新たなムダを発生させる原因にもなるからです。

①造りすぎのムダの顕在化

深い川は水中のものが見えない

➡ムダが専門家でないと判らない

浅くすると水中のものが浮かび上がり外から見える

➡ムダが誰にも判る

②造りすぎによる発生するムダ(2次的ムダ)

・材料、部品の先食い
・電気、エアー、油などのエネルギーの浪費
・パレット、箱などの増加
・運搬車、リフトなどの増加
・作業者、管理などの増加

③造りすぎのムダの発生する理由

・機械故障、不良、欠勤等に対する安心賃
・負荷量のバラツキ
・誤った稼働率向上、見かけの能率向上
・ラインを止めたということが罪悪という考え方
・人が多い
・仕組みの悪さ

TPSの概論1/3

トヨタ生産方式(以下TPS)について書いていきます。

TPSの基本的な考え方は

原価低減の必要性

企業の発展には、適正な利益を上げることが必要です。
利益は一般に、「売価ー原価」の差であると言われてますが、この利益を上げる方法は、2つあります。一つは売値を上げる方法で、もう一つは、原価を下げる方法です。

<売価と原価>

〇 利益=売値 ー 原価

利益を増やすには
①売値を上げる・・・相場で決まる
②原価を下げる・・・造り方で決まる

× 売値=原価 + 利益

他社との価格競争に打ち勝っていくには、売値を上げる事は困難なことです。
このため、原価を下げる事で企業の利益を確保する事が重要です。

物の造り方と原価

原価の中には、同じものを造るのにどこの企業も同じだけかかる費用と、物の造り方によって差の出る費用があります。

この「造り方」によって発生する費用は従業員一人一人の知恵と努力によって下げることができます。

林 南八 先生の略歴

林 南八 先生の略歴を書きます。

昭和18年5月2日生・出身地 東京

1966(昭和41)年(武蔵工業大学、工学部機械工学科卒)
         トヨタ自動車工業株式会社 入社
         元町工場機械部技術員室 配属

1970~71(昭和45~46)年
    鈴村主査と遭遇初めて叱られ目一杯逆らった事がきっかけで
    TPS(トヨタ生産方式)の世界へ
    以来、社内外を問わずあらゆる製造現場の改善に投入され修業
    大野耐一氏、鈴村氏より直接、薫陶を受けた最後の世代

1982(昭和57)年 課長に昇格、製造課長5年経験

1982(昭和57)年 (トヨタ自動車株式会社へ社名変更)

1987(昭和62)年 次長に昇格(元町工場機械部)

1988(昭和63)年 生産管理部 生産調査室主査となり社内社外および海外にてTPS推進に従事

1991(平成3)年 部長級に昇格 高岡工場の主査として、組立の生産性向上と物流問題に専念

1993(平成5)年 生産調査部へ戻る

1997(平成9)年 生産調査部長

1998(平成10)年 理事に昇格(生産調査部長)

2001(平成13)年 技監に就任

2009(平成21)年 取締役に就任
         生産企画本部 オーダーデリバリー改善推進担当
         生産技術本部 TPS指導担当
         製造本部 TPS徹底推進担当

2011(平成23)年 取締役を退任、技監に就任

2012(平成24)年  中部インダストリアル・エンジニアリング協会会長 就任

2014(平成26)年 技監を退任、顧問に就任

トヨタ生産方式の本質と進化(深化)8/8

前回の林 南八先生の教えの続きです。

トヨタ生産方式の本質と進化(深化)

ⅩⅢ.大野さん・鈴村さんに教わった真の人財育成の留意点

=知識を与える前に意識を植え付けろ=(大野語録)

・意識は1対1でしか伝わらない

鼠算式に増やすしかない

私たちの心構えは正に意識の問題 ⇒ 実務を通じ一つ一つ植え付ける

=管理とは何ぞや=

・Management=管理 と訳したことが間違い

=”のうりょく”という字を書いてみよ=

能力、 脳力、 悩力

・知識は脳のひだの間にある

・悩むとヒダが縮んで知恵が飛び出す

・優秀な部下を悩まして知識を引き出すのが仕事(大野語録)

=限界とか最適値は前提条件を固定した時に決まる=(大野語録)

・前提条件を覆す為に採用されていると心得よ!!

=マニュアル化・標準化を鵜呑みしたまま使わせていないか=

=マニュアル化してあると、すぐにマスターするが、すぐに忘れる=

・悩み抜いたところでマニュアルを解説

=最近の若い者は指示待ち族でいかん?=

=任せるということは=

=フォローと督促は違う=

・どうなっている? どうなっている?
・課題を与えた瞬間から己も考える謙虚さが大切
・ありがとう(感謝)

=モノづくりも課題の与え方も1個流しが原則=

ⅩⅣ.日本のモノづくりの強さを支えてきたのは 強い現場

モノ造りは人造り!!

常に現場へ出て問題点を顕在化し、具体的な課題を与え
確実にフォローすることが何より大切!!

①お客様第一主義

②現地、現物で日々改善しつづける

③技術革新、オンリーワン技術の確立

今 求められていることは、真の”人財育成”