モノづくり企業の改革の必然性とその戦略 その9

奥田 碩 さんの講演内容です。

3.1.3 産学連携で産業の発展を

 「科学技術創造立国」に不可欠なのが、産学官の連携です、

ここ数年、国家財政がきわめて厳しい状況にあり、さまざまな財政支 出の削減が進められているなかで、科学技術関連の予算については減ら されないばかりか、むしろ増加しています。その中でもとくに重視されているのが、「産学連携」です。

その気運は一種の国民運動とでもいえるような盛り上がりを見せて おり、政府の調査によれば、1992 年度から 2002年度の10年間で、企業 と大学の共同研究は5倍近くに増加しています。大学発のベンチャーも 年間数百社のペースで誕生しています。

これはすなわち、モノづくり企業の改革において、大学との連携ということが、きわめて重要なテーマとなっているということを示すもので しょう。

ここで最も重要なのが、産学の人材交流を通じて、大学で創造された 技術を、ビジネスにつなげていくことです、これからの産学連携は、ビ ジネスとしての連携の時代に入ってくるのです。ノーベル賞の連続受賞 や、発表された論文の引用件数の多さ、また、GDPに対する研究開発 投資額や特許登録件数でも、わが国は、世界のトップクラスにあります。 しかし、これらの成果が、効率的に産業化へと結びつき、わが国の社会 生活の向上や、新産業の創出、雇用の拡大につながっているケースが少ないのがわが国の現状なのです。実際、経営開発国際研究所(IMD)に よる世界各国の競争力ランキングによれば、研究成果が事業化される水 準や、起業家精神の度合いという点で、日本は主要先進諸国の中で最も 低い水準にあります。

これはやはり、わが国にそうした人材不足や環境が整っていないこと が最大の問題点だと思われます、大学で創造された知を、わが国の企業 として、積極的に事業化することができる人材を、産学連携で育成して いかなければなりません。企業と大学との人事交流、あるいは産学共同 での技術系人材の育成などにモノづくり企業が取り組むことで、大学で 創造された知を、 ビジネスとして開花させていくことができるはずだと 考えています(図 3.4参照)。

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