モノづくり企業の改革の必然性とその戦略 その13

奥田 碩 さんの講演内容です。

3.2.2 現場力の点検と再構築

 具体的には、知的熟練を蓄積した熟年層の技能者がリストラされた結 果、現場の技能の水準が低下し、それが相次ぐ工場の火災や事故などに つながっているとの指摘もあります。

そのような目で近年の事故やトラブルをみて見ると、現場の手違いや 手抜きがあり、これらは利益や業績を過剰に意識したための違反行為が 原因となっていることが多いように思います。その背後には、単なる規 律や気持ちの緩みといった問題ではなく、現場の人材の力、いわば「現 場力」といったものの低下を招く構造的な要因があるのかもしれません。

これは明白な証拠があるわけではありませんしかし、一連の事故の 大きな要因として、現場の熟練工や高度人材の減少、過度の成果指向に よる従業員へのプレッシャーが働いているのではないかという懸念は残ります。

さらにその背景として、世間に長期雇用や企業の雇用維持努力を軽視したり批判したりする風潮が広がったことを指摘する意見もあります。

一つひとつの現場の努力が国家経済の土台を支えており、その劣化を 放置しては技術革新も経済発展もありえません。私たちはこうした指摘 を謙虚に受け止め、 リストラに邁進するあまり、現場力の衰退を見過ごしてこなかったか深く反省し、再点検してみる必要があります。現場力 の維持は経営者の責任です。そして、わが国の現場力は、人間尊重と長 期的視野という、いわゆる日本的な経営によって長期間をかけて培われたものです。

これは技能に限ったことではありません。先端技術の分野においても、 長期間打ち込むことで身につく能力というものがたくさんあり、足元の 業績に気をとられ、将来的な技術力を失わないよう、注意が必要です。 今後、団塊の世代の人たちが大量に定年をむかえる時にきており、そう した人たちの培ってきたノウハウ技術を次の世代に、伝承させていくこ とも重要です。これらのことは、手遅れになる前に、その原点に立ち戻 って、PDCA サイクルが回っているか、 ノウハウ、技術の伝承がしっかりと、されているか、今一度検証してみる必要があると思います。

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