モノづくり企業の改革の必然性とその戦略 その14

奥田 碩 さんの講演内容です。

3.2.3 人材の育成

わが国にとって、一番大切なことは、人を育てるということでありま す。

最近、長引く経済の不振のなかで企業業績が思わしくなく、企業が人 材を育成する余力がなくなっている、というようなことがいわれます。

たしかに、たいへん立派な経営者のなかにも、「もう新卒を採用して 育てているのでは間に合わないから、中途採用で即戦力を採用したい」 とか「就職するときには即戦力に育っているような教育政策、 人材育成 政策が必要だ」などという人がけっこういますが、それだけではうまく いかないと思います。即戦力になるような実力のある人なら、欲しい企業も多くあり、当然そういう人の値段は高くなるでしょうそれを、企 業内で育ててきた人と同じ賃金で採用しようというのは無理というもの です。

雇用情勢はまだまだ厳しい状況にありますが、それでも採用してすぐ に即戦力になる人は少ないのが実情です。しかも経済は上向いています から、ますます即戦力になる人材の採用は難しくなってくるでしょう。

結局のところ、「これからの日本の教育は即戦力を育てなければいけ ない」などという他人任せの態度では、人材の確保は難しいのです。む しろ、いかにして優秀な人材を育て、やる気を高めて、会社に貢献して もらうかが、企業の競争力を決定すると考えるべきです。事実、日本商 工会議所が実施した「総合的人材ニーズ調査」の分析結果が商工会議所 のホームページに掲載されていますが、それを見ると、業績が拡大し、 成長している企業ほど、人材育成に積極的に取り組んでいることが明ら かにされています。

「業績不振だから、人材を育成していられない」などという企業に未 来はありません、業績不振であればこそ、歯を食いしばってでも人材育 成に取り組み、人材の成長と業績の拡大の好循環をつくっていかなければなりません。 人材育成は、決してコストではなく、研究開発投資などと同様に、将 来の企業経営を支えるための大切な投資なのです。

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