モノづくり企業の改革の必然性とその戦略 その15

奥田 碩 さんの講演内容です。

3.3 日本の未来に夢と生きがいがもてる進路づくり

第3番目の大きな課題は、「日本の未来に夢と生きがいがもてる進路 づくり」です。今日の日本には、少子化、高齢化をはじめとしてさまざまな不安材料があります。こうしたなかで、日本という国を今後どのようにしていくのか、人々の心に希望を与えるような、夢と生きがいを感 じさせられるような進路、ビジョンが求められています。

3.3.1 日本に「成長エンジンと制度インフラ」の強力な両輪づくり

国家経済を自動車にたとえれば、科学技術開発の創造が成長のエンジ ンであるとすれば、財政や税制、社会保障などといった制度インフラは、 ボディやサスペンションに当たるものだろうと思います。いくらエンジ ンが強力でも、ボディやサスペンションが弱かったり、重すぎたりした ら、長期間にわたって安心して走りつづけることはできません(図 3.6 参照)。

キャッチアップという「坂の上の雲」をめざして、 エンジンをフル回転させながら、ひたすら登り続けてきました。このような時期には、ボディやサスペンションは、大きくて無骨で、 とにかく 頑丈なものであることが求められていたと思います。

それに対し、これからは、グローバル化や少子化・高齢化といった厳しい環境変化のなかで、竹中平蔵さんの言葉を借りれば、「日本は狭く 細いナローパス、隘路を行かなければならない」のです。

しかもそれは、いわば見通しの悪い濃霧の道であり、そのうえ、環境 変化に取り残されないよう、これまで以上のスピードで走り抜けなければなりません。このような状況で、引き続き技術革新のエンジンをフル 回転させて走っていくためには、ボディもサスペンションも、強靭であるとともに、軽くて、柔軟性の高いものに整備しなおしていく必要があるでしょう。 それこそが、経済や財政、あるいは社会保障の構造改革な のです。