奥田 碩の講演会 その11

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その11。今までどこにも出てないので大変貴重ですよ。

次に国内市場でございますが、申し上げるまでもなくグローバル経営を進めていく上では海外と並びまして私どもが寄って立つもう一方の柱でありまして、量、収益の両面とも安定した強化のものとして行かなきゃならないという状況であります。

しかし国内市場は残念ながら既に成熟化して長引く不況の中で、総市場は昨年が588万台。これは90年代に入って最低の水準となりました。

本年につきましても枠の拡大した軽自動車の需要の増大、新型のリッターカーを中心としたコンパクト乗用車市場での盛り上がりはあったということはございますが、市場全体を活性化するまでには至らずに残念ながら全体としては昨年とほぼ同じレベルにとどまる。

この水準は、実は需要のピークでありました90年777万代からは約200万台弱の大幅な減少ということなってることに加えまして、売上高や収益という面でみましても利幅の小さいテイクアウト車のウエイトが高まっていることから、大変厳しい状況にある。

しかし市場が大変厳しいと言うだけでは何も前進ができないので、市場からのメッセージを俊敏に読み取りまして、次の出荷に活かしていく。とそういうことが重要であります。

こういった意味ではこの2年間に、軽自動車やあるいはリッターカーを中心とする小型車の総市場に占めるウエイトが急速に日本の中で高まってきているという現象が、果たして単に長引く不況あるいは人々の先行きの不安を反映したそういうものなのか。

それとも欧州の市場のように大型車か小型車だ。こういった二極化の現象に向かう構造変化が日本でも既に進みつつあるのか。

税制のグリーンカーなどの今後の法制の動向や、人々の地球環境問題に対する意識の変化なども含めて、多面的に分析検討して、今後の拡販に向けてあらゆる分野で早急な対応をとっていく必要があるところにかかっております。

幸いトヨタの本年の市場につきましてはオールトヨタの一丸となった取り組みによりまして、長年目標にしておりました除軽市場は40%以上をたぶん上回ることは多分は守ることができると思います。

これはここ数年取り組んで参りました需要創造型の商品、あるいは価値創造型商品の開発等。

さらにネッツ店などに代表される新しい販売手法などの取り組みが徐々に成果を上げてきた。そういうことであります。

しかし国内での圧倒的優位確保に向けては、ただいま申し上げました市場の変化が伝えるメッセージをいち早く的確に読み取ることと、それをまた拡販につなげていく。

とこういった努力あるいは収益向上への取り組みということに加えまして、価値観の多様化あるいは情報化社会に適応した新しいマーケティング手法、あるいは販売手法の開発など各々の分野で取り組みを片時も慢心せずに確実にスピーディーに進めていかなくてはならない。といった状況にあると思います。

また日本メーカーの体力も弱ってきているということもありまして、世界第二位のマーケットである日本市場をアジア戦略の拠点とするべく欧米メーカーが、今が色んな意味で進出の絶好のチャンスと捉えまして、日本メーカーとの戦略的な提供を始め、買収も含め各種の攻勢をかけてきている。というのが現状であります。

自動車メーカーの再編は決して日本市場だけでのものではなく、私どもはあらゆる分野で改革のスピードを上げて一刻も早く盤石の体制を築いていくつもりで取り組んでいく必要があるとそのように思います。

以上21世紀の初頭におけるグローバルな販売目標を中心にお話をいたしましたが、私どもがグローバル経営を円滑に進めていくためには、各地域の事業体でそれぞれ収益構造の改善に取り組み収益面で見ても自立性を高めて、事業を進めれば進めるほど、販売あるは収益この両面で足腰の強いグローバル企業になっていうことが必要であるし、そうになるべきであると考えております。