同一労働同一賃金について その6

「同一労働同一賃金」への対応策の続きです。

N運送会社事件。これについては最高裁は払わなければいけないと判決がでたのが精勤手当を正社員に対して払うなら非正規にも払わなきゃいけない。賞金手当も払わなきゃいけない。逆に家族住宅手当については払わなくてもいい。という最高裁の判断です。

しかしこの最高裁の判断を巡って、新聞紙上では会社に対して配慮した判決であると解説が載っておりましたが、弁護士サイトからは違う見解が出てます。それはこのような見解です。

N運送会社事件では会社が嘱託に対して色々な配慮していた前提があってこのような判決になった。

N社事件 各手当の判断理由

  • 基本賃金・能率給・職務給

  ・定年前より上回る基本賃金、歩合給係数の有利な設定、再雇用後の減額は2%~12%、

   年金支給まで支給される手当あり

  ・上記の要素から、収入の安定への配慮、成果が反映されやすい工夫などを裁判所は評価

    → 職務内容等が定年前と同一であっても、能率給・職務給の不支給は不合理で

      はない(払う必要なし)

  • 精勤手当

  ・職務内容等が同一であれば、皆勤奨励する必要性は正社員・嘱託間で相違なし

    → 不支給は不合理である(払う必要あり)

  • 住宅手当・家族手当

  ・住宅手当は住宅費負担の補助、家族手当は扶養の補助(いずれも生活費の補助)

  ・正社員は幅広い年代が存在し、生活費補助に相応の理由あり、嘱託は年金支給が予定されている

   定年再雇用者である

    → 職務内容等が定年前と同一であっても、不支給は不合理ではない

     (払う必要なし)

  • 役付手当

  ・正社員のうちから指定された役付者に支給(年功、勤続要素無し)

    → 職務内容等が定年前と同一であっても、不支給は不合理ではない

     (払う必要なし)

  • 超勤手当(時間外手当)

    → 計算基礎に精勤手当が含まれないのは不合理

  • 賞与

  ・嘱託は年金支給が予定されている定年再雇用者であり、収入の安定や成果反映

   などを会社が配慮や工夫をしている

      → 職務内容等が定年前と同一であっても、不支給は不合理ではない

      (払う必要なし)

同一労働同一賃金について その5

「同一労働同一賃金」への対応策の続きです。

H社事件 各手当の判断理由

  • 住宅手当

・正社員は全国転勤前提のため、住宅費補助の必要性あり

・契約社員は全国転勤ないため、住宅費補助の必要性なし

     → 不合理ではない(払う必要なし)

  • 皆勤手当

  ・手当の目的(勤続奨励による出勤者確保)は無期・有期で事情が異ならない

     → 不合理である(払う必要あり)

  • 無事故手当

  ・安全運転や事故防止の必要性は無期・有期の間に相違はない

     → 不合理である(払う必要あり)

  • 作業手当

   ・特定の作業を行う対価としての手当。職務内容等が無期・有期間で異ならないので手当の必要性は両者にあり

     → 不合理である(払う必要あり)

  • 給食手当

  ・食事に係る費用補助が目的。勤務時間中に食事を取ることの必要性は無期・有期間で異ならない

    → 不合理である(払う必要あり)

  • 通勤手当

   ・通勤に要する費用補填が目的。無期・有期の間に通勤に関する費用に相違はない

    → 不合理である(払う必要あり)

次のものについては払わなければいけないという最高裁判断がありました。

皆勤手当、無事故手当、作業手当、休職手当、通勤手当こういったものは払わなければいけないという判断が出ています。

同一労働同一賃金について その4

「同一労働同一賃金」への対応策の続きです。

判決最高裁の判決です。それはですねH運送会社とN運送会社の例ですが、ともに運転手で同一労働というのは分かりやすい。

H運送会社の場合は現役の人で、N運送会社の場合は継続雇用の再雇用者という違いがあります。

同一労働同一賃金裁判の判決は?

H運送会社については最高裁の判断としては、住宅手当は非正規の人に払わなくても良い。その理由は、正社員は全国転勤を前提にしているが、契約社員はそういう前提じゃない。

ということは逆にいうならば一カ所しか事業者がないという会社の場合は正社員転勤の前提がないので、その場合は正社員も住宅の非正規社員も住宅手当を払えという判断と考えられる。

  • 職務の内容等

  ・業務の内容および業務の責任の程度に相違なし

  ・契約社員には配転・出向の定めなし、就業場所変更も予定なし  

  ・契約社員には等級制度なし

  • 正社員と同一の権利と有することの主張について

   → 法の効力で正社員の労働条件と同一になるものと解することはできない

  • 各手当についての相違が、職務内容等を考慮して不合理と認めら

  れるか否かを検討すべきである。

同一労働同一賃金について その3

「同一労働同一賃金」への対応策の続きです。

説明義務について詳しく書きます。この説明義務というところを強調して上げたいのは努力義務なく説明する義務があるということで、例えば正社員には食事手当が出とるけどパートには食事手当が出てないと何故なんだという質問を受けたらそれに対して書面で回答する義務が起きるということです。これは非常に大きなポイントだと思います。

  • 説明すべき事項

   ・通常の労働者との間の待遇の相違の内容および理由

   ・均等均衡待遇、賃金および福利厚生等の決定にあたり考慮した事項など

                      ↓

       短時間・有期雇用労働者からの求めが合った場合に説明義務

  • 説明の例

   ・役職手当 有期雇用労働者は役職就任は予定されていないので、役割に対しての対価である役職手当は支給しない

   ・住宅手当 有期雇用労働者は転勤・異動等が予定されていないので、住宅費補助の主旨である住宅手当は支給しない(正社員も転勤が予定されていない場合、当説明は適用できない)

   ・通勤手当 有期雇用契約者は限定された通勤圏内からの採用、一方で通常の労働者の採用にあたっては、通勤距離に制限はない。従って、通勤交通費補助としての通勤手当の上限額に相違を設けている。

ここで「均等待遇」「均衡待遇」の均等待遇とは何かと言いますと、同じ働き方をしている場合、同じ仕事で同じ勤務時間だという場合、その場合は給与などの労働条件を同じにすることを意味します。

均衡待遇働き方が違う場合、その違いに応じてバランスを考えた処遇をすることをいます。

例えば5時間勤務である場合5/8というようになるのが均衡待遇です。

【均等待遇】

同じ働き方をしている場合、処遇(賃金などの労働条件)を同じにすることを意味します。

【均衡待遇】

働き方が違う場合、その違いに応じてバランスを考えた処遇を決定することを意味します。

同一労働同一賃金について その2

「同一労働同一賃金」への対応策の続きです。

改正法の要点部分の概要

  • 短時間・有期雇用社員と正社員との間の不合理な待遇の相違の禁止(第8条)

   → 個々の待遇ごとにその性質や目的に照らして判断されるべき

  • 正社員と同視される短時間・有期雇用社員について、賃金等について差別的取り扱いの禁止(均等待遇:第9条)
  • 正社員と同視される者以外の短時間・有期雇用社員の賃金決定にあたっての均衡

  配慮努力(第10条)

  • 短時間・有期雇用社員の待遇に関する説明義務(第14条)

同一労働同一賃金に関する法律の話で、その中でポイントを上げます。

・短時間有期雇用社員と正社員との間の不合理な待遇の相違を禁止する。

・不合理な待遇の相違つまり差別的な扱いを禁止する。

・正社員と同視される同じように見える短時間有期雇用社員について賃金についての差別的取扱いの禁止。

・均等待遇、正社員と同視されるもの以外の短時間有期雇用社員の賃金決定にあたっての均衡待遇と均等待遇ということが出てきます。

再雇用の嘱託の賃金相場です。

5年以上勤務で、60歳以上も継続雇用されている嘱託の賃金相場である。残業や通勤手当が含まれない所定内賃金。平成28年度の愛知県版。管理職は含まれていない。

中位の人で31万8千円(59歳)→22万9千円(61歳)になっており72%である。

・短時間有期雇用社員の待遇に関する説明義務。

同一労働同一賃金について その1

「同一労働同一賃金」への対応策について書きます。

労働組合とか従業員側からその施行を待たずに色々な要求が出てくることは当然予想されます。

また最高裁での判決も平成30年の6月には出ており、方向がはっきりしておりますので対応が迫られるところであります。

まずは最初に法律論からです。

法律論は法改正という視点と、最高裁の判決という視点と、もう一つは役所が出したガイドラインという視点の三つがあります。

同一労働同一賃金」の法改正のアウトライン

① 労働契約法とパートタイム労働法の双方に規定されている「正社員との不合理な待遇の禁止」をパートタイム労働法へ統合(労働契約法の不合理禁止規定を廃止)

② パートタイム労働法の対象を短時間労働者に加え、新たに有期雇用労働者へ適用拡大

  (法の正式題名を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」へ改正)

→改正法を基に、指針や通達等で具体的運用を明示すると想定される

不合理な労働条件の禁止(改正前労働契約法)

労働契約法第20条(平成30年7月時点)

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、「職務の内容」という)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものではあってはならない。

不合理な待遇の禁止(改正パート労働者法)

「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法」第8条の概要

(平成31年改正) 「事業主はその雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれ  ぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者との待遇との間において、当該短時  間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の  程度(以下、「職務の内容」という)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その  他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

奥田 碩の講演会 その19まとめ

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その19。まとめです。

この講演の内容はとても良かったと思います。講演をしていただいた企業の従業員にとっても。またその従業員でなく一般市民として聴いても良かった内容だと思います。

まず経済産業の流れとしてアルビン・トフラーの「第三の波」を紹介して、

第一の波:農業革命、第二の波:産業革命、第三の波:情報革命を上げ今後の狙いを最初に明示しておいて、

次に日本がこのままではまずく、改革を断行しなければならない。その改革の課題を3つ挙げている。

第1は社会の急速な変化の中で、失われつつある日本人の自信あるいや活力を回復。

第2は高度情報化社会への対応。

第3は国際化への対応。

その3つの課題を解決するのに民間企業の役割が大きい。役人に任しておけない。我々が頑張るんだ!

我々グループが一致団結して他の連合に負けずに取り組みが必要である。

北米市場、欧州市場、アジア市場、日本国内市場の4極に分け分析し攻めどころを分けている。

課題を解決するために取り組みを4つ挙げ居ている。

  • 技術革新 ②コスト競争力を軸とした企業体質の強化 ③グローバルマネージメントの改革 ④グループの事業構造の再構築
  • 技術革新では、地球環境問題を解決する低燃費のハイブリッドなどの技術革新をしてデファクトスタンダードとなる。及び情報化へ対応しITSの推進。いまでは自動運転といった方が分かり易いと思います。
  • コスト競争力を軸とした企業体質の強化では、モノづくりでは永遠のテーマである。

開発期間の短縮、あるいはプラットフォームの総合、部品の共通化モジュール化、システム化の推進さらには研究開発費、設備投資等の固定費の削減をする。

  • グローバルマネージメントの改革では、日米欧アジアの4極とグローバル本社といった構想のもとに、現地で対応できるものは現地に任せてグローバル本社は全体最適という観点から地域別、事業別あるいは車種別をスルーに管理して経営資源の有効活用する。
  • グループの事業構造の再構築では、技術・品質・生産・販売・流通あらゆる分野で他の追随を許さない、コアコンピタンスの確立ことができる企業構造に転換していかなければならない。そのためにグループの事業構造の最適化に向けて取り組む必要があります。

そのグループの事業構造の最適化の考えが現在も進められている。記憶に新しい所では、豊田工機と光洋精工の合併のJTEKTやアイシン精機とアイシンAWの統合。である。

最後に豊田綱領を改めて確認し、成功の囚人にはなるな。変えないことが一番悪い。

改めて身に染みる内容でした。     おしまい。

奥田 碩の講演会 その18

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その18。今までどこにも出てないので大変貴重ですよ。

色々と申し上げましたが最後に申し上げたいことは、私どもトヨタグループが創業以来企業行動の原点として参りました経営理念は、しっかりと今後も受け継ぎまして実践していく必要があるとそういうことであります。

ご存知のように豊田綱領では企業の役割として

  • 一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
  • 一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
  • 一、華美を戒め、質実剛健たるべし
  • 一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
  • 一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし

「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」とこういうふうになっております。つまり企業は社会の公器でありまして目先の利益を追求するだけでは企業の存在意義はない。社会への貢献を果たしてこそ存在意義がある。とこういう風に明確に取り組んでおります。

またものづくりについては「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」

常に研究に努めることによりまして創造性を磨き時流に先駆けたものづくりに努めるということの重要性を強調しております。

企業として社会に貢献するということは、まずお客様第一主義、現地現物主義に徹しまして常に良品廉価な商品をお客様に提供して、また従業員には雇用機会と生きがい、あるいは働きがい。こういう職場のある職場を提供して株主に対しては適正、配当払い。また国にはしっかりと税金を払う。そして良き企業市民として地域社会とともに発展したことによりまして豊かな社会づくりに貢献していくことができるというわけであります。

私どもトヨタグループを今日の発展に導かれた諸先輩方は、創業以来この理念を企業活動の基本として厳しい環境の中で果敢に挑戦してその都度新しい道を切り開いてこられました。

現在のグローバル化の時代においては私ども一人ひとりが地球規模でものを考え行動していかなくてはならない時代であります。

96年の1月に私どもが将来目指すべき方向として掲げた2005年ビジョンにおいても社会への貢献度が、トヨタの成長の糧になる。とこういうこれまでの基本理念を踏襲しております。

私はこの理念を守りまして、いく他の諸先輩が厳しい環境に挑戦され大胆な発想と決断によって実践された時流に先駆けたものづくりの精神をしっかりと受け継ぎ、グローバルにこれを具現化していくということによりましてトヨタはグローバル企業としての確固としたアイデンティティを確立して成長を果たしてそれを確実に後輩たちに引き継いでいく。とそういうことになると思います。

それが私共の使命であるとこういうふうに考えております。

今私どもはこういったグローバル経営のほんの入り口に差し掛かっているに過ぎず、よく言われるヒト・モノ・カネそして全体の経営という面で従来の延長戦ではとても越えられない高いハードルがこれからいくつもを待ち構えたわけでございました。

改革の手を片時も緩めるわけにはいかないというわけであります。

私は社内に対して常に成功の囚人にはなるな。変えないことが一番悪い。改革するためには今までの仕組みをすべて否定して、それをゼロベースから発想をしてかかれ。という風に言ってまいりました。