中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その2

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その2

第一章 e―ビジネスに関する社会的環境

1.拡大するインターネット

  インターネットの普及は、平成12年版通信白書によると1999年にはすでに2,706万人に達し、2005年には7,670万人と予測されている。さらに、最近では、携帯電話によるインターネットの利用も爆発的に伸びている。

  インターネットは、当初の情報発信や情報収集の時代を過ぎて、インターネットをツールとして各企業がビジネスにいかに使うか、どのようなビジネスが新たに展開できるかを実験している段階である。インターネツトが大きなビジネスチャンスを生むと考えられ、世界的に新しいインターネットビジネスの拡大が予測されている。

  「IT革命」が流行語になり、インターネットに代表される情報技術を使って各企業は自社のビジネスモデルを追求している。

政府においても、インターネット上での電子商取引(Electronic Cmmerce)についてのルールを定める「電子契約案」(仮称)を2001年1月の通常国会に提出する方針を発表した。契約書が取引先に届いた時点で契約とみなす「到達主義」を採用することや、販売側に契約商品の確認義務を課すことなどである。

2.e―ビジネスの出現

  インターネットは新しいビジネスのツールとしてみなされ、従来の取引に変わってインターネット上での電子商取引が活発になり、e―ビジネス(または、e―コマース)と言われるようになった。このe―ビジネスは、その取引形態から、企業と消費者間の取引をあらわすB2C(注1)と、企業と企業間の取引をあらわすB2B(注2)に大別される。

  B2Cは、本を販売して有名になったアメリカの某ドットコム社始め、日本にも多くの会社が出てきており、一般消費者に向けていろいろな商品を販売するビジネスの形態である。B2Cは、主に企業がショップと言われるホームページを開設し注文を受けるオンラインショッピングで、衣料・雑貨・パソコン・食品など広範囲にわたっている。その規模は「日米電子商取引の市場調査」(通産省)報告によると、1999年に3,360億円から2004年には6兆6,620億円に達すると予測されている。

一方、さらに大きな規模で拡大が見込まれる市場がB2Bである。

3.B2Bの市場

  日本では始まったばかりの分野であるが、アメリカではすでに活発な動きが見られる。「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料によると、日本国内のB2B市場規模は、図1.1にあるとおり、1999年には12兆円が、2003年には68兆円と見込まれている。

 B2Bはあらゆる分野で浸透すると見込まれる。「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料において、2003年には、電子・情報関連製品が21.0兆円に、自動車・自動車部品が17.5兆円と予測されており、これらの製造業を中心に積極的に電子商取引は取り入れられると考えられている。

 B2Bの先進国のアメリカにおいての象徴的な出来事は、2000年2月に発表された自動車のビッグスリーの3社による部品の調達構想である。

 B2Bが注目される点は、企業間の取引を単に電子化するのではなく、従来のビジネスのやり方や業種・業界の枠組みを大きく変革する力を持っているからに他ならない。

 大手企業が従来から行ってきたEDIをインターネットの方式に切り替えることにより、業務の効率化とスピードアップを図る。また、インターネットを通して、在庫状況や生産計画などの情報を共有化することで企業間の連携が図れる。これが、現在の企業で多く取り入れられているB2Bの形態である。

 最近では、従来からの系列取引(企業グループ取引)に変わって、インターネット上に情報を公開してネット調達を行う動きが出てきた。日本においては、自動車や電機の代表的なメーカーが一斉に動き出している。そのメリットは、各社ともこれまで取引のなかった企業と取引することで、より安い価格と短い納期で部品・材料が調達できると見ているからである。

 各企業が行うインターネット調達と並んで注目を集めているB2Bに、インターネット取引所(マーケットプレース)がある。マーケットプレースは、1998年ごろからアメリカで爆発的に広がり始めた形態で、製品の売り手と買い手を結び付ける場所を電子的に提供する。メーカーは従来の系列取引からオープンな企業取引が出来、安く調達することが可能になる。部品などを販売する企業にとっては、従来出来なかったメーカーとの取引の可能性が出てきた。

                       図1.1 日米B2B電子商取引市場規模

出所:「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料より  

     (注1) B2CのBは企業(Business)であり、Cは消費者(Consumer)

 である。すなわち、企業対消費者間の取引を現す場合に使われる。B2Cの‘2’は企業から消費者への意味で従来toを用いていたが、最近は‘2’を使うことが多くなった。したがって、本報告書では、‘2’を使っている。

      (注2) B2Bは、B2Cと同様な表現方法であり、Bは企業を意味しており、企業間取 

 引を表現するときに使われる。