中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その4

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その4

2.バイヤー型モデルの事例

 中部地区の大手企業の主催するモデルとして3例を紹介する。最初の2例は、引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例、3つ目は発注情報の交換にNetを活用する例である。どの例も、従来の固定的なネットワークから、その範囲の拡大を意図しようとするものと見られるが、現時点において、本格的なNet活用段階に至っているものではない。その意味で各社とも模索段階にあると見られる。

(1)引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例

図2.2)引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例

これは、引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例である、事例として、中部地区を拠点とするA社、B社を紹介する。両社の概要は以下の通りである。

  • A社概要
  • 業種:自動車部品製造業
  • 従業員数:6,500人
  • B社概要
  • 業種:工作機械 他 製造業
  • 従業員数:4,000人

この事例では、バイヤー側(A社、B社)はインターネット上のホームページに自社の調達対象の概略や基本的な取引き条件等の公開できる情報を掲載する。それを見た、新規取引き希望セラーは、所定の連絡先へコンタクトする。ここで初期段階の条件を双方確認のうえ、バイヤー側は新規取引き希望セラーへ別途設けられている、セキュリティを確保したサイトへのアクセス権限を与える。ここには、図面等詳細な仕様情報が掲載されており、新規取引き希望セラーはこのサイトを通じて見積り等の情報を伝達する。価格交渉後、取引きが決定したら、VAN等の従来の手段により発注情報を配信する。取引き実績ができたセラーは以後、セキュリティ確保のサイトにより、見積り等の情報交換を行う。

A社の場合、対象としている品目は、現在は、治具・刃具・設備・原材料である。このシステムは既に稼動中であり、3年以内に2,600億円にものぼる全対象品目をこのシステムにのせる計画である。

B社の場合、現在システムを構築中であり、2001年度中に稼動予定である。既存VANによる発注は現在企業数にして40%、伝票数にして60%が実施されているが、小取引先をグループ化し、商社を利用する等して2001年度中に100%VAN化する計画である。

これらの企業では、引合いのオープン化、コストダウン、リードタイム短縮等がNet購買のメリットであるとしている。

(2)発注情報の交換にNetを活用している例

図2.3)発注情報の交換にNetを活用している例

これは、発注情報の交換にNetを活用している例である。インターネットEDIといえるものであり、e-ビジネスの事例とは厳密には言えないものであるが、中小サプライヤーをNet取引に巻込んだ事例として、中部地区を拠点とするC社を紹介する。C社の概要は以下の通りである。

 業種:OA機器、機械製造業

従業員数:3,800人

C社の場合、部品・材料の発注情報をセキュリティが確保されたインターネットを介して、納入業者(セラー)へ配信している。従来、大手の取引先とはVANを利用したEDIにより、発注データの配信を行っていたが、インターネットを利用したEDIも利用することにより、中小の取引先へもEDI化が可能となった。2000年4月現在、EDI化率は全発注件数の95%であるという。これはインターネットを利用することにより、セラー側は通常のパソコン程度の軽微な投資でEDI化が可能となったためである。残りの5%はFAXサーバーの利用により、C社からの配信データをFAXにて取引先(セラー)へ配信している。