中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その25
第6章 中小製造業におけるB2Bネット取引に関する効果および今後の課題と提言
(1)B2Bネット取引の効果
今回のアンケートの結果をふまえて、中小製造業におけるB2Bネット取引の効果および今後の課題を考察する。今回のアンケート結果を見ると、日本でのネット購買はいまだ黎明期にあると言える。インターネットで受注に成功した中小企業の割合は回答をいただいた一般企業で16%、回答いただいたM/P参加企業で45%にすぎない。45%の内訳として、23%の企業が1社の受注、7.7%の企業が2社,3.1%の企業が3社、11%の企業が4社の受注に成功している。すなわち、受注できた企業の約半数の企業が1社のみの受注で、新しい受注の実績がやっとできた段階である。現状の調査ではB2Bネット取引の効果を明確に測定することはできないが、今後、インターネット購買の機会が増えていくという前提で、インターネット購買がコストダウン・受注拡大などによって中小製造業の業績に貢献できるかどうか、そして今後の課題と提言について考えてみたい。
(2)インターネット購買はコストと拡販の面から中小製造業の業績に貢献できるか?
ITを活用したネットワークはその役割から次の3つに分けて考えられる。
① EDI: 特定の企業間での専用オンライン受発注システムである。
② インターネットEDI: 特定の企業間でのオンライン受発注システムをインター
ネットで行う。
③ e-ビジネス: ホームページを作成し、既存の顧客とのオンライン受発注を行うばかりではなく、新規顧客も獲得する。電子商取引サイトに登録することもある。
この3つの場合において、コストと拡販に関して時間と金額の面からその貢献の可能性を考えてみたい。
コストの面から
EDIの場合 | インターネット EDIの場合 | eービジネスの場合 | |
時間 | *特定企業間の情報交換の迅速化 特定企業についての作業の効率アップ *伝票発行などの定型業務の合理化 *注文書・納品書の郵送等のトラブルから開放 *図面がデータとして受取りが可能 *受取りデータの二次加工が可能 *打合せに出向く時間の削減 | EDIと同じ効果 プラス 新規取引先とのネットワーク開始時の設定時間削減 | インターネットEDIと同じ効果 プラス 自社の周辺にない技術を有する取引先を募集したいとき、広い地域からメンバーを集めることができる。予め新規の購買先の情報を入手することによって無駄な訪問を避けることができる。 |
金額 | *購買業務にかかる時間短縮によるコスト削減 | EDIと同じ効果 プラス 導入コストが安価で ある。 | インターネットEDIと同じ効果 プラス 信頼性のある汎用部品を購買する場合、広域で情報を集め、安価な部品を購入できる可能性がある。 |
拡販の面から
EDIの場合 | インターネットEDIの場合 | eービジネスの場合 | |
時間 | - | - | リアルタイムで自社の紹介・広告が できる。 |
金額 | - | - | 安価な価格で世界中に自社の紹介と 広告ができる。 |
以上がコストダウンと拡販の面から考えたネットのメリットである。時間の面からは上記のように多くのメリットが明白になっているが、金額の面からははっきりしたメリットは現時点では出てこない。