中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その28
おわりに
世界の政治、経済、学界のトップ約3000人を集めて、2000年1月世界経済フォーラムがスイスのダボスで開催された。通常ダボス会議といわれ、その年の世界の潮流を決めるといわれる重要な会議で
2000年度のメインテーマはITであった。
ダボス会議の議論の結果から明確になった事項は、次の3項目である。
- 世界の経済は、1990年代の不況を抜け2000年代はポジティブな局面となってきた。
- IT産業が21世紀の世界経済を牽引する。
- ベンチャー企業がニューエコノミーを強力に実現する。
これを受けて、本年度の九州沖縄サミットもITを中心課題として実施された。IT革命は、一般的に「情報技術(コンピューター、通信ネットワーク)の発展に由来する1990年代に始まる一連の変化(電子取引市場の発展、流通の中抜き現象、多様業態の入り混じり、組織形態と規模の変化、ベンチャー企業の興隆)」と定義されており、その本質は、1)企業成長スピードの高速化、2)経済原理の変化、3)変化を導く創造的活力の台頭、と考えられる。
日本の国際競争力は1996年4位であったが、1999年16位、2000年17位(スイス経営開発国際研究所)となっている。重厚長大産業(鉄鋼、造船、自動車等)のオールドエコノミーの時代からIT革命によるニューエコノミーの時代に移ることにより、日本の国際競争力は急速に低下している。
インターネットの普及率はシンガポール、台湾、韓国より遅れている。この原因は規制緩和の遅れにより、1)通信料金が高い、2)通信速度が遅い等があげられるが、特に高速インターネットの普及については、米国400万回線、韓国100万回線、日本22万回線と世界の先進国から大きく水をあけられている。
インターネット革命は従来のインフラを根底から変えつつあり、電子商取引、サプライチェーン、ニュービジネス等総てのビジネスはIT革命の影響を大きく受ける環境にある。米国の株価上昇も、IT関連企業(マイクロソフト、シスコシステム等)の影響が大きい。これらを背景に、日本政府も国内大手企業もいっせいにIT革命の方向に走り出している。勿論中小企業にも参入のチャンスは広がっており、積極的に挑戦する企業も多く見受けられる。
しかし、現実の多くの中小企業は長期不況で厳しい経営環境にあり、情報化の推進においても
- 社員の情報活用能力の不足
- 社員情報化の専門人材の不足
- 情報化に関するソフト、ハードの購入費や維持費の資金不足
- セキュリティ確保の不安
- 適切な情報化投資の内容が分からない
等多くの問題を抱えている。
今回の調査を通して、我々士は時代の潮流であるIT革命の本質を理解し、ITに関し厳しい環境にある多くの中小企業に的確に支援できる能力の向上が求められると強く認識した。
今回の調査に際し、訪問調査やアンケート調査に大変協力をいただいた企業各社に心から謝意を申し上げたい。又、この様な機会を与えていただいた診断協会本部に感謝したい。この小冊子がいささかなりともアンケートに協力いただいた企業各社および士各位のご参考になり得れば誠に幸甚である。
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