社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。
なかなか良い話しがあります。 その7
もうひとつの例でいえば、揺れている舟と止まっている舟という話しがあります。これも私が考えたんですが、ここに小舟がいます。この舟が揺れています。これを見た人はどうするかというと、ぱっと飛び乗って揺れないように安定させるわけです。
これは西部劇で暴れ馬が来た時と同じです。そうやって解決します。1漕の舟だけならそれで解決できるかもしれませんが、たくさんの舟が揺れていたらそんなことはできません。人が1人溺れていたら飛び込んで助ければいいが、100人の子どもが溺れていたらそんなことはできませんね。
こういうのがいけないといっているんではなく、これは個の概念だと言っているんです。この舟が揺れているというのがわかれば誰だって動くと思います。ベテランでなくても、新入社員でも動くと思います。
我々にとって大事なのは、むしろ、揺れていない舟を揺らすのが課長の仕事だと思います。すなわち、一見揺れていない、しかし、ちょっと波が来るとひっくり返るかもしれない。揺れさして揺れたらこちらへ渡せばいいわけです。これが先手管理です。
揺れてから課長が走っているのは、子どものサッカーと同じです。子どものサッカーではボールがいった方向にみんながドーと走っていきます。ボールを迫いかけてはいけないのであって、ボールが来そうなところへ行かないといけないわけです。
トカゲのしっぽもそうです。しっぽが切れてピョンピョン動いている間に本体はもういなくなってしまっているんです。
課長というのは問題を作って渡したら、もう次の方向へ行かないといけないんです。この問題にこだわってはいけないんです。この問題はもう係長に任せたんだからある程度任せておいて、しばらくしてから「おい、あの問題はどうなったか」と聞けばいいんです。わかりますか。
揺れていない舟を揺らそうとしても揺れないかもしれません。揺れないと無駄なことをしたことになります。だから難しいんです。だから、評価が難しいんです。揺れている舟を止めるのがいけないといっているんではなく、それは一番重要ですよ。しかし、係長以下に任せなさいといっているんです。皆さんも係長の時はこれを十分やっていたんですから。むしろ課長にはもっと大きなことをやってもらいたいと思っていたんではないですか。ところが、課長になってみると、いぜん係長の時と同じことを考えているでしょう。