自分で納得したベストな価格か

調達の役割の中で重要な業務である購入価格を決める役割がある。

購入価格を決めると簡単なようでとても難しいことである。

購入価格を決めるにはサプライヤーと合意が必要である。買い手が一方的に価格を決めれない。

必ず折衝・ネゴが発生する。

それでも一番簡単なのが相見積もりを取って最安値のサプライヤーに出すのが手っ取り早いが、そう簡単でもない。

まず、全サプライヤーの見積りが全て高い場合がある。その場合の判断と、その場合どうすべきか決まっていない。

また、サプライヤー毎に見積りに条件を付けてくる場合が多い。その条件は場合によってはそのサプライヤーのノウハウでもあるから簡単に相見積もり先に開示できない場合がある。

そこで、前回まで類似品を購入したいたなら、仕様差で購入価格を決める。といっても、前回購入と今では時期が異なるや、ロットが異なるや、仕様差を価格的にどう評価すれば良いかなど一概に決めれない。

結局答えはないので、相見積もりや自分なりの仕様差評価で自分として納得した価格を目標にしてサプライヤーと価格交渉をする。

自分として納得する目安としては「自分が自分の財布からお金を出して買うつもりで価格交渉をせよ。」

と昔先輩から言われたことがある。一理あるが、何千万もする機械を誰が自分で買うか!買わない。

自分として納得するにはベストを尽くしたか。

・相見積もりをしたか

 ・仕様差の評価をしたか

 ・サプライヤーとどこまで交渉したか

・ロットの評価をしたか

 ・梱包や物流を評価をしたか

など、後で振り返って自分はベストを尽くしたと思えるならその価格が正しい。

ベストでないと思うならその価格はもっと下げれてたと思われる。

購入品は1個数円の物から何千万の物がありそれぞれ担当者が付く。

その担当者はたとえ数円の物だろうが自分が担当したならベストを尽くすべきである。ベストを尽くす習慣を身に付けるべきである。

調達(購買)とは

調達の活動がどうやらふらついているようだ。

調達の基本を教える人がいなくなり、他部署から調達の本筋を知らない人が来て荒らして、さらに新人が入り調達の心得がないままベテランになり調達の目指すところが分からなくなっているようだ。

やはり調達のベテランが「調達とは」を伝導していくべきでは。

私は先輩から調達マンがいなくてもやっていけるのが目指す調達の姿だと教えられたことがある。

よくQCDを確保した物を調達するのが調達の使命だと聞くが、

Qについては仕様を設計が決め、その使用に対して守られているかどうかを検査が確認にしておりサプライヤーがちゃんと品質を守れば調達は出る幕無し。

Dについては納期は生産管理、工務が決め伝票を発行しその通りにサプライヤーがちゃんと納品すれば調達は出る幕無し。

Cについては、実はここだけは調達が主体性をもって活躍する場である。コストが下がれば下がるほど会社はもうかる。逆にサプライヤーからすれば売値を上げたい。サプライヤーと意思と調達の意思が衝突する場である。

つまりサプライヤーがQとDを守って物を造って供給すれば残りはCだけである。

調達マンに労務費が発生するがその労務費がCに値するか?Cの成果が無ければ調達マンは不要では。したがって、調達マンはいつもCの成果を確認すべきである。

例えばリピートの量産品がリピート価格から下がって数量と掛け合わせるといくらの効果額になったか。

または、新規品が出てきてベースの類似品に対していくら下がり数量(企画台数)と掛け合わせるといくらの効果額になるか。

または、サプライヤーが値上げしてきた。値上げ申請額に対していくらで押さえたか。

などで調達マンの労務費に対する評価ができる。

また先輩から教えてもらったことでは、サプライヤーからしたら相談できるのは調達だけであるから調達マンは必ずサプライヤーの見方になること。

品質問題なので社内のいたる部署からサプライヤーが責められることがあるが、そういったときサプライヤーが相談できるのは調達だけである。そんなときの他の部署と同じようにサプライヤーを責めてサプライヤーはよりどころがなくなりってしまい去ってしまうしかなくなる。そうならないように調達だけはサプライヤーの見方になるように。

またこんなことも良く言われました。

「アンテナは高く腰は低くする。」

「軸足はブレるな。」

調達という部署は社内から色々いわれ振り回されがちだが、やはり信念をもって軸を曲げない事だと思う。

今のままだとさらに調達がふらふらと彷徨い信念のない集団になりそうである。

谷口孝男語録 資料2

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話の資料です。資料2

B. 左

1.受信と発信
2.見えるものと見えないもの
3.下位概念と上位概念
4.揺れている舟と止っている船
5.D型人間とC型人間
6.Decision/目標の後と前
7.戦闘機とレーダー
8.問題と課題
9.IQとEQ
10.天動説と地動説
11.左脳と右脳
12.過去型と未来型

と 右

13.連続型と断続型
14.平時型と有時型
15.思考型と感性型
16.安定と不安定
17.後手管理と先手管理
18.知識と智恵
19.実践と戦略
20.現象的と意志的
21.実行と企画
22.ハードとソフト
23.常識と非常識
24.やっているとやっていない

谷口孝男語録 資料1

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話の資料です。資料1

A. ものの見方

! !本質を見よう , 見えないものを見よう , 未来から見よう , 外から見よう ! !

1 .一万円札の話

2.谷口浩美の話

3. 2点管理

4.もう1人の自分

5.不完全性理論

6.中間子理論

7.錆びた玉

8.一升びんの酒

9.七面鳥の話

10. SHOW&TELL

11 .美人コンテストの話

12.顧客に感動を

13.子供のサッカー

14.捕虜の話

15.GMの設計基準

16.バックトウザフューチャー

17.線引き

18.Tのセンス

19.勉強と学習

20.移動型作戦室

21.設変の話

22.オリンピックの話

23.デザインレビューの話

24.出の哲学

25.人類の歴史の話

26.トカゲのしっぽ

谷口孝男語録 その14

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その14

2005年の新任主事研修にて

やりたいと本気で思え(夢をもて)

・やれと言われてやるな、やりたいと思え。

・情報が来ないと口にしている人がいる。

⇒本気で欲しいと思っていない。思えば自分から取りに行くもの。

・仕事でもマジックでもそうだが、何事もできると思ったらできるし、できないと思ったらできない。何かを成し遂げたいという強い思いが重要である。

・夢無き者は喜び無し。

プロセスの重要性

・利益(成果)がでた事そのものには意味は無い。

⇒何をしたから利益がでたというプロセスに意味がある。

・物事を追求して追求してその結果として利益になる。

2005年度新任主事研修にて

組織は人の体と同じ

会社組織は人間の身体と同じで1つの塊である。

右手を切ったらどうなるか。切ってみないと中身がわからない。組織も切ってみて初めて繋がっている事がわかるのである。

・右手のトゲは左手で抜く。今の当社は右手のトゲを右手で抜こうと必死になって、抜けずに苦しんでいるだけに思える。

⇒製造(右手)で問題が発生(トゲが刺さった)したら、製造(右手)で抜こうとしており、他部署(左手)が手助けして抜こうとしていない。

組織は人間の体と同じで1つである。助け合わねばいけない。

2点管理で物事を捉える

・周囲がどう考えているか(評価しているか)を常に感じておく必要がある。

但し、周囲がこう考えているからと自分の意志を曲げる事はしなくて良い。

・良い、悪い2点でみなければ見えてこない。

・標準が間違っているかもという緊張感を持て。

⇒①あっているのが当然の標準に対して、②間違っているかもという2点管理の考え方。

谷口孝男語録 その13

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その13

2003年の新任主事研修にて

■企業は人である

■「知識」を持つことが教育ではない

・教育訓練は”知識”を持つことではない。知識がある人が偉いというのはおかしい。教育訓練とは身体で学ぶこと。

耳で聞いて学んだことはすぐ忘れてしまうが、身体で学んだことは忘れない。知の領域を越えること。

・中国というと、書籍をかき集めて、知ったような顔で中国を語る。しかし中国に実際に行かねば本当に中国のことは

分かるはずがない。そうして中国に行くことで、書籍では分からなかったことを体験すると、結果実際に行ってみなければ何も分からないということが分かるようになる。身体で学んだのである。

■言葉の裏にある本質を見出す

・何かあって怒ると、「社長に怒られた」ということだけを口にする。自分が怒られたのでなく、相手が怒っているのである。

愛情を持って怒っている。1人だけに怒っているのではなく、もっと幅広く怒っているのである。

もう1人の自分がいて、「社長が怒っているぞ。なぜ怒っているのかな・%」と疑問に思うような見方をして欲しい。

言葉だけを理解するのでなく、怒って言葉を発した相手の心の内を理解すること。言葉で理解せず、気持ちを理解すること。

気持ちに本質を見出して欲しい。

・よく「知識」をもとに勝手に先入観・既成概念で前提条件を立て、分かったつもりでモノを見ようとするが、もっと視野・思考の幅広さを持って欲しい。相手の言っていることを認め(但しすぐ反応しない)、奥の「思考」を捉え、幅広くものごとを考えるようにすること。

・「革新」というと、その言葉だけが飛び交ってしまい、革新の言葉の裏の思想が伝わっていない。役員や部門長クラスが「革新」という言葉を噛み砕いて下に伝えていない。土管を通って下に流れているだけのように見える。言葉で理解するのではなく、その裏の本質を考えることが重要。

■会社は人の身体そのもの

・右手をケガした時、人は困る。ではそのケガの手当は右手自身がするだろうか。おそらく左手がケガの手当をするはず。

では今の組織ではどうか。生産部門がケガをした時、生産部門が手当をするというのが前提になっていないか。会社がケガをして困っているならば、なぜ左手(たとえば技術や生技)が手当をしようとしないのか。そこに壁の厚さを感じる。

・一体の身体を見ていると、手足つながり感は見え難いが、仮に人の右腕を切って見た時、初めてそこに骨や血管や神経といった、強固なつながりがあるということがわかる。会社も機能で分けた時には、そこに強固なつながりがあるはず。機能で分けるのは、そのつながりを見えやすくするためである。

■子供心を持つ

・子供は予備知識がゼロで、素直に分からないことや疑問が出てくる。大人になって変に知識を多くつけると、「知らないこと」を「知らない」と言えないのである。それの何が悪いのか?「知っていることを知っている」といって何が良いのか?

大人は「分かっているつもり」になって疑問が湧かなくなる。すべて当り前とか普通のこととして片付けてしまう。子供は何も知らないために新たなことへの感動が多く、それで血が騒ぎ、元気の源となる。その心を今一度持てるようになって欲しい。

・また、大人は疑問が湧けばすぐに解決しようとする。答えはすぐに出なくても良い。ただ「こうしたい」という気持ちで突き進む素直さも必要。全社監査でも「何をやったか」ではなぐ何をやりたいか」ということについて皆の話を聞きたい。

■結果を目的としない

・利益が出ただけでは嬉しくない。「これこれこういうことをやって利益が出た」ということを聞くと嬉しい。利益は結果にすぎない。

そのプロセスがどうであったかが重要。

■夢を持った提案型の人材へ

・社長が「革新」と言っていても、「言わせておけ。俺達はもっと重要なことに直面している。それを社長にわからせよう。」という発想が欲しい。昔は「直訴するぞ」という気概があった。今は皆従順になりすぎている。言われたことをやるのではなく、「こうしたい!」という夢を持った提案型の人材になって欲しい。

谷口孝男語録 その12

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その12

最後に谷口浩美の話しです。マラソンの選手ですが、彼がいいことを言っていましたので最後にそれを紹介して終わりたいと思います。

「夢なきもの理想なし、理想なきもの目標なし、目標なきもの実行なし、実行なきもの成果なし、成果なきもの喜びなし」

といっています。何故ここに出したかというと、管理とは何かと関係があると思うからです。これを見てみると「夢」と「理想」と「目標」と「実行」と「成果」と「喜び」になっていますね。皆さんが会社で仕事をやっていると、「実行」を主体にやっていますね。ある目標を与えられて、「実行」だけを全監とかで報告しているわけです。「夢」と「理想」は余り口に出してはいけないことになっています。すなわち、「実行」は目に見えるんです。「夢」と「理想」は見えない。

だから私は成果が出たら、喜んで一杯飲んだり、今度はこんなことをやろうじゃないかといって騒いだり、「夢」と「理想」のところで接してほしいと思います。「実行」は余りに固すぎます。おもしろくありません。だから、ある目標が出てもその目標が出る裏側にはハラハラしたものがないといけない。

先ほど控室でA常務が「夜眠れないくらい興奮しないと本物ではない」と言ってみえましたが、これなんです。これをやって一泡吹かせてやろうとか、 トヨタより早く開発しようじゃないかとか、 トヨタをあっといわせてやろうとか、何かがないとここが死んでしまうわけです。

だから私はできるだけこことここの議論を、自分たちのグループの幹都の間ではここを語り合ってもらいたいと思います。そして、やりとげたら「やったなあ!」と喜ぶ。ゴルフでも長いパットが決まったらカーとくる。これが会社ではないような気がします。「やりました、目標の98%を達成しました。」とたんたんといっている。それではおもしろくない。

だから私は最後に夢のある職場、喜びのある職場にしてもらいたいというのが最後のお願いです。これが言いたかったために今までいろいろ話して来たんです。

これで私の話を終わります。どうもありがとうございました。

谷口孝男語録 その11

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その11

次に七面鳥の話しですが、これはアメリカの話で、新婚の奥さんがクリスマスの時に七面鳥をオープンで焼いていたそうです。ももが一番うまいのに、ももを切り落として焼いていたそうです。

それを見た旦那が「なぜそんなことをやっているんだ、もったいないではないか」と言ったら、奥さんは「うちは昔からこういうふうにやっているんです。何を言うんですか。何ならお母さんに開いて下さい。」と文句を言うもんだから、且那はお母さんに電話したそうです。「お宅の娘さんはももを落として焼くんですよ」と言ったら、お母さんは「何を言うんですか、そんなの当たり前ですよ。うちはおばあちゃんからそう教わってきたんですから。」と言うもんだから、今度はおばあちゃんに電話したそうです。

そうしたらおばあちゃんは「あなたの言うとおりです、うちの娘はそんな変なことをやっているんですか」と。旦那は「おばあちゃんがそうしなさいといったそうですよ」と言ったら、おばあちゃんは「私はそんなことは言っていない、昔のオープンは小さかったから、ももを落とさないと入らなかったから、落として焼いていただけです」という話です。

というのは、これはこうだと思いこんでいることが、何でそもそもこんなことをやっているのかというのを考えないといけないということです。

稟議書に印鑑をべたべた打っているが、何でこんなにたくさん打たないといけないのかも時々は考えないといけないし、くだらん会議も「これはやることになっていますから」というのでなく、考えないといけない。否定するわけではないが、何でそうなっているのかをわかった上でやらないと、やることになっているからでは幅の狭い人間になるということです。

次はSHOW & TELLの話しです。アメリカでは幼稚園や小学校の教育に、家からなんでもいいから持って来なさい、おもちゃでも何でもいいから。そして、おもちゃを見せながら自分が何を感じているかを説明するわけです。私の言うSHOWというのは見えるもので、TELLというのは見えないものだと思うんです。見えるものを使って見えないもの、自分の考え方とかを訓練しているそうです。

次は野球とサッカーの話しです。最近サッカーが活気を帯びておもしろい。それに対して野球がつまらなくなったと言われていますが何故でしよう。ある子どもに聞いたら、野球はサインだらけだと言うんです。ピッチャーは監督の言うとおりにやっているんです。サッカーは監督のサインは届かない。試合になると本人にまかせつばなしなんです。結局、管理野球になっているんです。だから、管理をそのように捉えるとだめなんです。I会長がパリで講演された時もTQCではなくTQMになっていました。

ヨーロッパでは今、Cはコントロールとか統制とかいう悪いイメージを与えるということでM、マネージメントに変えているそうです。

だから私は、本来管理とは裏には徹底的なディスカッション、徹底的な訓練をやるけれども、いざ本番になると担当者が自由に伸び伸びとやれるように訓練することがTQCではないかと、本当の管理ではないかと感じています。

特に技術開発は創造性が大事ですから管理してできるものではないと思います。

谷口孝男語録 その10

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その10

次に一升ビンの酒という話しがあります。一升ビンに酒が半分はいっています。その時どう思いますか。

半分飲んでしまった、もう半分しか残っていないと思うか、まだ半分残っていると思うか、同じ一升ビンを見ても人によって逆に見えるということです。

残業規制があって、平均10時間以内に押えよという指示が出ていて、人事部が毎月運営委員会で報告しているんですが、技術部はまだ他に比べて残業が多いんです。10時間以内に押えないといけないのに、今までの実績はこうで、先月はこんなに減りましたと報告している。これではいけないんです。10時間が目標なんですから。一見これはよくやったように聞こえるが、よくやっていないんです、本当は。10時間という目標に対してやらないといけないんです。

どこの会社にも品質問題があるでしょう。97~99%は良品で、残りの1%とか3%が不良でしよう。その1%、3%で社長以下大騒ぎしているでしょう。品質保証部は99%も良品を作ってくれてありがとうとは言わないでしよう。

物の見方によって違って見えるんだから、少し違ったところからものを見る癖をつけてほしいと思います。

次に捕虜の話しというのは、故豊田名誉会長が生前に話されたことです。名誉会長が戦争中に敵に捕まった時、四面とも柵で、兵隊が四六時中見張りをしていたそうです。名誉会長が兵隊にいったそうです。「我々のために見張りをやって大変だな」と。すると兵隊は「私はあなたたちが逃げるのを見張っているわけではない、もし私たちがここにいないと住民があなたたちを殺しに来ますよ、我々はあなたたちを守ってあげているんですよ」といったそうです。だから、同じものを見てもまるで反対に見えるということで「君たちも、良くものを見ないといけないよ」と言ってみえました。同じ現象でもまったく反対に見る人もいるということです。

これも、M副社長の話ですが、「当社は3割も離職するんですよ」と言ったら、「3割か、それはいいな」と言うんです。台湾だと100%だそうです。100%替わるそうです。物の見方は違うんです。増えたからいい、減ったからダメだとか、大きいからいい、小さいからダメだとか簡単に観念的には決められないと思います。

谷口孝男語録 その9

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その9

レジメに・・・・と・・・・という並びになっていますが、左の方が係長の時の姿で、右の方が課長になったら自分自身をシフトしてほしいと思っている姿です。考え方だけで結構ですから。あるいは時々考えてほしいと思います。源流管理というか、見えないところに遡ってほしいという考え方です。

1万円札の話しというのは、1万円札が道に落ちていたとすると、皆さんはどうしますか。

拾って逃げるでしよう。それではダメです。悪いことをしたからダメだと言っているんではありませんよ。そんなスケールの小さな人間ではいけないと言っているのです。

1万円落ちていたらもう2~3枚落ちているはずだと思って探す。それが、管理者というわけです。というのは、1万円札は見えたから拾ったわけです。自分の意志は入っていません。最近金が足りない、金がどこかに落ちていないかなと思って歩いていて見つけたのなら、それを拾って走って逃げても構いません。なぜなら。自分の意志で拾ったんだから。

ところが、目に見えてから1万円札を拾ったのは、目に見えなかったら拾ったんですね。仕事もそうです。誰かに文句言われたからやった。そしていい結果を出した。

もし、その人から言われなかったらやらなかった。そんなのではダメだといっているんです。1万円札が落ちていてそれを拾ったら、もう2~3枚落ちていないかと思って探す。

これは自分の意志でやるんだからいいんです。だから、自分の意志でものを見ないといけない。自分は何をしようと常に思っていないと、同じものを見ても達って見えるということです。

例えばA/Tでギアノイズが発生したとします。D型人間のやり手の人間は、よし、俺がプロジェクトリーダーになって解決してやるといって対策本部を作り、その長になってパパーとやる。それがD型人間の典型です。 こんなのは若手の専門家が集まれば解決できるもんです。技術的難しさはあるかもしれませんがね。そんなところに部長や重役が行ってガーガー言っても何の役にもたちません。管理者は1つの問題が発生しているのなら、

谷口孝男語録 その8

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その8

次のD型人間とC型人間の話しも同じです。朝香先生にも食いつこうと思ったんですが、PDCAを回せと言ってみえますね。御存じですね。しかし、Pからは入れるわけはないんです。何をプランしていいのかわからないんですから。

私はPDCAではおかしいと思っています。Cがありますね、アクションとはアクションプランを立ててDoをすることです。私が言いたいのはCから姶まるということです。プランというのは実際は現状把握し、チェックしてプランを立てるのがプランだと言っているんです。私はCPDだと思います。

D型人間というのはやるぞと言ってやるタイプ。C型人間は、おい、そういうことをやって本当に良くなるのか、もっと他にやることがあるんではないかと考えるのが C型人間です。

すなわち、チェック(評価)と呼んでいます。それでいいのかということです。「例の件の対策はできたか」と聞くと、部下は必ず「今、試験をやっています」と言うわけですが、これは漫才みたいなもんです。一番いけないのは何もやっていないのに「検討中です」という人がいます。検討中というのは何もやっていないんですよ。何かやっていれば「何をやっています」と言うんです。ただいま検討中というのは何もやっていませんということです。

私は「例の対策はどうなった」と質問した時に、「今試験をやっています」という答に対しては怒るんです。「試験をやっているんですが、まだ答が出ていません」とか「まだ対策できていません」という答が欲しいんです。そう答える人の方がよっぽど頭がいい人だと思います。

ところが、「やっていません」ということはロが裂けても言いませんね。「何かをしています」と必ず言います。違いますか。肝心なことはぼかして、他のことを言うでしよう。

例えば「昨日は徹夜しました」とか。「昨日徹夜しましたから、明日には解決します」というのならいいんですが。だけど、「昨日徹夜しました」「ああそうか、ご苦労さんだな」では何が何かさつばりわかりません。

C型人間というのはそういうことです。最近、アイシン精機からM副社長がみえましたが、Mさんは完全なC型人間でして、「こういう設備が買いたい、最新銃の高速回転です」と。すると、「おい儲かるのか」とくるわけです。「いえ、これはものすごく高速回転で世界初ですわ」「いや、儲かるのかと聞いているんだ」というわけです。設備がいいのはいいが、その設備で何をやって、その結果会社は良くなるのかと聞いているんです。

ところが、言っている方も何を言っているかわからないわけです。「一万回転で回ります」とか「モーターはどこに使っていまして・・・」とか、そんなことはどうでもいいんです。儲かるのかと聞いているんです。

技術だと本当にこの機械を入れると品質は良くなるのかと言うのがC型人間だと思います。だから、やることよりもやったあとの姿を絶えず見ること。「試験やっています」というんだったら、「試験やったら結果が出るんだな」と。「V社へ文句の依頼状を出しました」なら、「依頼状を出したら向こうから返事がくるんだな」と。返事が来るまでは信用できないといいたいわけです。これがC型人間です。

谷口孝男語録 その7

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その7

もうひとつの例でいえば、揺れている舟と止まっている舟という話しがあります。これも私が考えたんですが、ここに小舟がいます。この舟が揺れています。これを見た人はどうするかというと、ぱっと飛び乗って揺れないように安定させるわけです。

これは西部劇で暴れ馬が来た時と同じです。そうやって解決します。1漕の舟だけならそれで解決できるかもしれませんが、たくさんの舟が揺れていたらそんなことはできません。人が1人溺れていたら飛び込んで助ければいいが、100人の子どもが溺れていたらそんなことはできませんね。

こういうのがいけないといっているんではなく、これは個の概念だと言っているんです。この舟が揺れているというのがわかれば誰だって動くと思います。ベテランでなくても、新入社員でも動くと思います。

我々にとって大事なのは、むしろ、揺れていない舟を揺らすのが課長の仕事だと思います。すなわち、一見揺れていない、しかし、ちょっと波が来るとひっくり返るかもしれない。揺れさして揺れたらこちらへ渡せばいいわけです。これが先手管理です。

揺れてから課長が走っているのは、子どものサッカーと同じです。子どものサッカーではボールがいった方向にみんながドーと走っていきます。ボールを迫いかけてはいけないのであって、ボールが来そうなところへ行かないといけないわけです。

トカゲのしっぽもそうです。しっぽが切れてピョンピョン動いている間に本体はもういなくなってしまっているんです。

課長というのは問題を作って渡したら、もう次の方向へ行かないといけないんです。この問題にこだわってはいけないんです。この問題はもう係長に任せたんだからある程度任せておいて、しばらくしてから「おい、あの問題はどうなったか」と聞けばいいんです。わかりますか。

揺れていない舟を揺らそうとしても揺れないかもしれません。揺れないと無駄なことをしたことになります。だから難しいんです。だから、評価が難しいんです。揺れている舟を止めるのがいけないといっているんではなく、それは一番重要ですよ。しかし、係長以下に任せなさいといっているんです。皆さんも係長の時はこれを十分やっていたんですから。むしろ課長にはもっと大きなことをやってもらいたいと思っていたんではないですか。ところが、課長になってみると、いぜん係長の時と同じことを考えているでしょう。

谷口孝男語録 その6

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その6

次に左と右という話しをします。製品とか設備とか目に見えるものがこちらの左側にあります。金を運用した結果があります。右側は金の出所が書いてあります。例えば短期借金とか、長期借金とかがあります。普通左側は見えるんですが右側は見えません。隣の家が新築しても新車を買っても、借金して買っているかもわからないわけです。

見かけで金持ちかどうかはわからないんです。だから、右側を見ないといけないんです。会社の体質を見る時にも、裏を見ないといけないんです。当社みたいに立派な本社ビルが建ったから立派かと思うと、実は借金だらけなんです。アイシン精機は減収減益だといいながらも含み資産はたくさんあるんです。当社なんか物が売れなくなったら給料が払えなくなるんです。だから、右を見ないといけないということです。

右、すなわち見えない方を見るくせをつけようということです。左は氷山の一角で右の方が大部分なんです。左は係長以下でも誰でも見えるんです。見える物は多少もたもたするかもしれないが新入社員でも対策できます。

すなわち、テーマがはっきりしていれば対策できます。右の見えないものに注意を払っていこうというのが左と右の話しです。

受信と発信の話しも見えるものと見えないものも同じです。右は誰も言ってくれない、先手管理、発信、自分の意志などです。

皆さんも自分の意志、考え方を出してほしいと思います。それがリーダーの仕事だと思います。リーダーの仕事というのは自分の意志を出すこと、すなわち目標、この目標というのは意志決定なんです。これでやると決めるわけです。決めるところに自分がいるわけです。決めたことをやるのは係長以下に任せるというふうに考え方を一度切り替えてほしいと思います。部長側に着くということです。

そして、この目標では不満だとか、部長!この目標でいいんですか、もっと大きな目標を出さないと会社としてはダメなんじゃないですかと、自分の部の名目を保つためにはそれでいいかもしれないが、 会社にとってはもっと大きな目標を出すべきだとつっつくのが課長として必要だと思います。

谷口孝男語録 その5

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その5

今日は具体的な話よりも、物の見方・考え方について話してみたい。何をどうするかと言うのは早過ぎると思うので、その前の段階、すなわち現在をどう見るかと言う訓練をしないといけないと思います。

TQCを勉強してQCセンスは皆さん身についていると思います。しかしTがつくと、TはトータルのT、すなわち全体のTであり、トップのTでもあります。トップと全体はイコールであるわけですが、このTのセンスがなかなか難しいわけです。

前述の上司の立場を考える訓練をしているとTのセンスは身につくわけです。社長の立場を考えてものを見ているとTのセンスは身につきます。

我々は不幸にして担当から上に上がってきているので、私は入社したら社長にしてやってやったらTのセンスが最初からつくのではないかと、そうすれば担当になった時、ものすごくやりやすいのではないかと、こう思うんですがね。下から上がっていくのでいけないのではないかと。Tのセンスと言うのはこのことです。全体を見ると言うことです。

それから、本質を見よう、見えないものを見よう、未来からものを見よう、外からものを見よう、ということについて今日は雑談を交えながら話していきたいと思います。

ここで息抜きして、戦鬪機とレーダーという話しがありますが、これは自分で考えた言葉で、現場を見ていて苦しんだあげく私がいつも言っている言葉なんですが、レーダーというのはクルクル回っていて、敵機が写ると、「それ!敵機だ」といって走り出すわけです。戦闘機に乗って敵機を落とそうとするわけです。

皆さんもほとんどそういったタイプではないかと思います。問題があるとすぐレーダーから離れて、自分がリーダーとなって問題対策に頭が行ってしまうでしょう。そうではありませんか。その時敵機が来たらどうしますか。

だから、管理者というのはレーダーから離れてはいけないんです。敵機に対策するには係長以下がいるんです。係長以下に任せてほしいと思います。自分はレーダーのところにいるべきです。

ただし、管理者といっても本当は課長ではなく部長の役割だとは思いますがね。すなわち、ある部屋に作戦室というのがあって、そこに世界地図があって、世界のマーケットが広がっていて、椅子に座ってグルグル見回している。

例は悪いんですが、品質問題が出たとします。トヨタからミッションが壊れたのでどうしてくれるとか、市場で問題が出たというとリーダーと走り出すわけです。おそらく皆さんも走り出すと思います。自分の責任だから。走っている間この問題は解決の方向に行くんですが、その間に次の問題が出つつあるかもしれません。

これをどうやって見つけるか。私はこれを後手管理と言っています。受信と発信という話しがありますが、これは受信です。問題を言われたから対策をしているんです。皆さんが係長の時は受信管理です。何か言われたらやる。目標を与えられたら目標通りやる。目標をいかに効率よく、早く、的確にやって、目標を達成するかということだったと思いますが、これからはこの目標でいいのかという立場でものを見てほしいと思います。すなわち、目標を作る側に立ってもらいたいと思います。

谷口孝男語録 その4

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その4

私が部長クラスの時に、痛感して自ら実残してきた自分の役割というのを自分なりに当時絵にしたものがありあます。

ここに中間管理者Aがいます。ここに上司Bがいて、ここに部下の係長以下Cがいます。そうした場合、自分の役割は何だと私が考えたのは、この上と下の間にあるということ、上が何を考えているのかを絶えず上とコミュニケーションをはかりながら、上司の方針とかを自分なりに明確にするということです。

上司も無意識のうちに考えているのですが、具体的に言ってくれない場合が多いわけです。だから聞き出すわけです。これはここに置いておきます。一歩こちらに下りてくるわけです。現場をうろうろ回って、現場でお前ら何でこんなことやっているのだと、あとで何が問題だろうと現状把握をする。

上司が期待していることとやっていることのギャップをここにぶつけることが中間管理者の役割だと思います。上司が考えているとおりに部下は動いていない。

これを私は中間子理論と呼んでいるのですが、またあとで説明します。すなわち、ここAは全く意見を持たない黒子に徹しないといけないわけです。この人Bが何をやろうとしているのかを考えるわけで、自分Aが何をやろうかというのはひとつも入っていない。黒子、参謀、知恵袋といったものの善し悪しによって、この実力が発揮できるのではないかと。

大統領が全ていろんな方針を出すわけではなく、ここにいる者Bが作文し、提案してやっているわけです。あなたがたは今ここAにいるわけですから、自己主張を少し押えて会社として、部としてどうあるべきかということを自分を超越して見なければいけないわけです。

これは非常に難しいことです。すぐに自分を主張したくなるものです。自分はこう考えているとか、自分のテーマにしたいとかにどうしてもなってしまいます。そうすると部の役割とかは見えてこなくなるわけです。

ここに上司Bがいてここに部下Cがいます。今までの職制ではここに中間管理者Aがいることになっていると思います。おそらくどこの職制表を見てもそうでしよう。これはいけないと私は思います。この上司Bの考えがすばらしかったとします。この中間管理者Aがこの上司Bほどスケールが大きくなかったとすると、この中間管理者Aがどういうことをこの部下Cに伝達するかというと、この考えを小さく縮小してここに伝えるわけです。自分の考えに置き換えて。

そうすると、ここ上司Bがすばらしい考えを持っているのにここ部下Cに伝わっているのはちっぽけなものになってしまいます。逆にここの苦情とか、いろんなものをここ中間管理者Aに上げた時にこの中間管理者Aがとろいと、この苦情がここ上司Bに上がっていかない。

それならこんな中間管理者Aはいない方がいいと思うわけです。そうすると、この上司Bの意見はここ部下Cへズバッといくし、この部下Cの考えもこの上司Bにズバッと上がります。これがいわゆるトヨタがやっているフラット化の原理ではないかと思うわけです。

それで私の職制表はこれだといっているわけです。ここに中間管理者Aがいる。すなわち、この上司Bが部下Cを使って展開しているのをそばから客観的に見ているわけです。そして、おかしいと思ったことをここへ指示しているわけです。この訓練をしてもらうとおもしろいと思います。そうすると、この中間管理者Aはずるいじゃないかと思うでしょう。自分で意志を出さないからこの上司Bの意志がここに展開する。

しかし心配しなくてもいいんです。この上司Bにはまた上司Eがいるわけです。この部下Cにはまた部下Fがいるわけです。そうすると、この担当Fとこの係長Cと中間管理者Aの関係を見ると、この係長Cが黒子にならないといけないわけです。すなわち、中間管理者Aが意志を出して担当者Fに言う。こうやっていけばずっと上まで展開できるのではないかと。

すなわち黒子説なわけです。これを私は中間子理論と呼んでいるんです。中間になった人が大事なので、このひとつの現れは、日本語のわからないアメリカ人と英語のわからない日本人がコミュニケーションをしようとした時にできないわけです。そこで、通訳が間に入るとコミュニケーションができるわけです。通訳がいるから2人が生きてくるわけです。

皆さんはその位置にいます。非常に重要なところにいるわけです。朝香先生からもトップとのパイプとか、いろんな言葉で言われて、私もわかっていたような気でいたのですが、いろいろ考えてみると、 こういうことだったんではないかと思います。これを一度実残してもらいたいと思います。

欲を出すとできません  自分が消えるわけですから。上司Bを立てて自己主張を抑えるわけですからね。

この訓練をすると、自分が上司になったらどういうことをやるべきか既にこの時知っているわけです。この時部長の訓練をやっているわけです。俺が部長にだったらこういうことをするということを含めて訓練しているわけです。部長になった時に楽ですよ。今度は重役と課長のことを考えればいいわけですから。

あなたたちも課長になったから課長の仕事をやるのではなく、課長の仕事ができるから課長になったんですよ。頼みますよ。そのへんを頭にいれて頂きたい。「俺が部長になったら部長の仕事をしつかりやる。今の部長はたるんでいる。」と言っている人は部長になっても部長の仕事をやらないものです。わかってくれますか。

谷口孝男語録 その3

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その3

私はこの頃はまだ新入社員で、そして77年のデ賞の時に課長になってデ賞で発表させられて、N賞も全面的に発表させられて、この間にPM賞・PM特別賞があり、これも前面的に発表させられて、91年のN賞パートⅡでも発表させられました。合計5回発表してきているのですが、その時はよしわかったと思っていたのですが、回が来るごとにまだまだレベルが低いなと実感し今日まで来ているわけであります。

ということは、先はどんどんあってレベルを上げる余地は十分ある。また上げなければいけないことだと思います。

だから、挑戦的なものを持たないと、まあまあで行こうと思っているとおそらく10年も経てば相当差がついているだろうと思います。まあまあでもいけるんですよ。だいたい仕事というのはまあまあでもいけそうです。まあまあでも悪いことをしているわけではないし、たるんでいるという見方もされない。よくやっているという見方もされるんですが、10年経って見ると大きな差が出てくるような気がします。

だから、チャンスがあるなら集中力を出してその場その場でものにしていかないと、あとでゆっくりものにしいくわけにはいかないような気がします。今日こういう研修会も息ぬきと同時に、色んな人がいて、色んな考え方があるというのを実感するということで非常に重要なのですが、何か1つか2つは身につけて帰らかといけないと思います。ここで聞いたことをあとで思い出して、現場に帰ってから実践しようということは不可能だと思います。

従って、この場で何かをつかみ取って頂かないといかんのではないかと思います。最もそれをつかめるだけのいい話ができるかどうかは別ですが。色んな人がいるし、色んな考え方がありますし、自分が日頃考えていたのと違う考えもございますので、そういう世界があるということを実感として体得して頂きたいと思います。

私が技術開発ばかりやってきたのでこういう話になりましたが、できるだけ技術開発だけでなく、他のことも話をしたいと思います。これは私のことではなくうちのトップの話ですが、技術、技術者とは何かといった場合に、うちのトップに言わせると「お客に初めて役にたった時が技術だ」といっています。

だからずっと研究していてもなにも世の中に出なければ、それは研究者でもなければ、技術者でもないというようなことで、非常にきつい言い方をするわけです。というのは号ロになって顧客に売れた瞬間にこの件についてはもう技術屋でなくなっているということです。次の技術屋なるためにはまた次のものの開発に入らないと次の技術屋ではないという、考え方として非常に厳しい教育をされてきたわけです。

例えばエジプトのナイル川が氾濫した時に、堤防が決壊したら大変なことになる。町が全滅するわけですが、その時に決壊するのを防ぐ技術に着手していたのでは遅いんです。堤防が決壊するのを防ぐ技術の開発に10年かかるのであれば、10年前に開発に者手しなければならないわけです。しかし、堤防はいっ決壊するのかわからないわけで、わかっていれば10年前に着手するわけです。それが研究開発の難しさだと私は思います。

これは考え方ですが、アイシン・エィ・ダブリュのA/Tは国内9社、海外9社へ納めていて、A/Tとしては世界をリードする立場にあるわけですが、なぜこんなところまできたのかなということを豊田名誉会長、諸戸会長のいろんなやり方を振り返ってみると、やはりここが重要だと、「トップが強い意志、高い目標を持続していた。」ということだと思います。

それとそれをまともに受けてリーダーがまじめにやってきて、それがずっと下まで展開してきているのだと思います。トップというのはリーダーの最頂点ですが、皆さんも課長になられて、ある範囲のリーダーですからリーダーのあり方を今後考えてもらわないといけないわけです。

谷口孝男語録 その2

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その2

当時のおもしろい話はあまりないのですが、いろいろ記億に残っている話としましては、とにかく12名でスタートしたわけですが、図面がまだ完全でありませんでした。しかも完全な図面がないままで生産準備をしなければならないという状祝でした。

ボルグワーナーは図面をあまり見せてくれないので、最初私と諸戸会長でアメリカのボルグワーナー本社に行った時は試作品の現物しか見させてくれない状態でした。その時突然、諸戸会長がその試作品に紙を乗せて色鉛筆でこすってやると、クラッチの大きさとかがわかるわけです。それを日本に持ってきて、私が勝手に図面にして、部品図を作って社内にばらまいてスタートしたというようなことがありました。それで成功したわけですが、成功した理由は3つくらいあると思います。

一つは故豊田名誉会長がオートマチック車は今後伸びると信じ込んでみえた。いわゆる先見性です。当時トヨグライドを作っていたわけですが、トヨタの搭載率はたしか1~2%位の時だったと思います。今は80%を越えていますがね。豊田名誉会長の先見性に確固たるものがあったということ。

もうひとつは諸戸会長の強力なリーターシップがあったということ。何が何でもやるんだという我々アイシン精機からこちらにきた人間で、トヨタとボルグワーナーの協力を得ながら、何が何でもやるんだという強い意志、高い目標があったということです。

それとあとひとつは、私はその当時新入社員に近かったわけですが、若い人達が何も考えずに一心不乱についていったということではないかと思います。

いろいろエピソードはあるのですが、例えば諸戸会長なんか負けず嫌いですから、当時アメリカはアメリカ、イギリスはイギリスで同時に開発をしていたわけですが、英文でレポートを書きました。私も日本語で書いて訳するのではなく、間達ってもいいから全部英文でレポートを書きました。それをどんどんアメリカに送りました。もともと欧米は日本をたいしたことはないと蔑視していましたからね。いろいろやるうちに、どうもアイシンワーナーは本気になっていると、そう見くびれないなと向こうは思ったと私は思うのです。確かに個々の技術は負けていたのですが、品質保証の考え方とか、そういうものでは我々の方が勝っていたような気がします。

1 9 7 2年に3速A/Tを出して3年くらいで4万台の生産ラインを作ったわけですが、ここでピンチが来ました。第1次オイルショックでオイルの値段がとても高騰し、さらに第2次オイルショックでさらに高騰したわけです。我々が3速A/Tを出して4万台の生産ラインを完成させた後、たいへんな難局が来たというわけです。 そこでオーバードライブ機構を企画したわけですが、このオーバードライブがオイルショックの時期にぴったり合って全世界を制覇したわけです。その後ロックアップですが、コンバータを直結するタイプで、これも燃費が非常に良く、これがまさにこの時期に一致して非常にヒットしました。その後ECTときて、現在FFの流れが来ているわけです。

谷口孝男語録 その1

社長になった谷口孝男さんが昔し語った話を書いていきます。

なかなか良い話しがあります。  その1

「若手管理者としての今後やるべき仕事とは」
(’ 94.5.25若手管理者研修会にて)

次期若手管理者が一同に集まって議論する機会はありそうでなかなかないので、できるだけこういうチャンスを有効に活用された方がいいと思う。

今回は日頃考えていることをざっくばらんに話していきます。

まず最初に、私の入社以来の経緯について話しておきます。私は愛知工業に最初入りまして、すぐアイシン精機になりまして、その後3~4年してボルグワーナーとアイシン精機の合弁会社であるアイシンワーナーというオートマチック専門の会社へ移りました。入社以来、オートマチックの開発、設計をずっとやってきたわけであります。そして、現在に至っているわけです。

最初アイシンワーナーができた時には、アイシン精機から移ったわけですが、技術部は諸戸会長以下、女性を含めて12名でスタートしたわけです。12 名で何をやるのかと、アイシン精機の方は「ボルグワーナーから技術導入してやるのだから、技術部はボルグワーナーの図面をコピーしておればいいんだ。コピーして名前のところだけ張り替えてやっとけばいいんだから、その位の人数でいいだろう。」ということでした。

しかし、我々としてはアイシン精機から出た以上、しかもトヨグライドの特許の閑係もあって、トヨグライドがボルグワーナーの特許に引っかかるのでどうしても合弁会社を作らないといけないというわけで作って、それが最初から4万台の工場を作るという壮大な計画で入タートしたのですから戻るに戻れないわけです。

しかも、いくらボルグワーナーの導入技術だといったって本当にうまくいくかどうかということで大変だったわけです。それでまず人集めから始めて、エンジニア集めから始めてやってきたわけです。そいうふうに会社ができたのが1 9 6 9年で、最初の3速のオートマチックトランスミッション(以下A/T)製品ができたのが1 9 7 2年ですから、わずか3年くらいしかなかったわけです。

その間に4万台生産の工場建設、開発、設備調達を同時にやらなければならなかったわけです。今から思うと、あの時はベクトル合わせとか全社一丸とかいう言葉はひとつも使わずに全社一丸となっており、ベクトルも合っていました。

あの時が仕事は忙しかったのですが精神的には安定していたような気がします。今の方がよっぽど精神的には不安定です。ごちゃごちゃと余分な情報が入り過ぎて精神的には苦しいです。そういう意味では、こうしたはっきりしたひとつの目標があるということは仕事がやりやすいなと思います。だから、トップの方は鮮明な確固たる目標を出さないと下が動揺するし、考えが変な方向へいってしまう。あるいは色気が出てくるというような、おかしなことがいっぱい出てくるようになると思います。会社が大きくなればなるほどそういう傾向があるのではないかと思います。

アイシン・エイ・タブリュも最近大きくなりまして、従業員数5 , 0 0 0名、売上高3 , 0 0 0億円という大きな会社になりましたから、ある意味では今が大事な時だと思います。

AW物語 BWとの合弁編

アイシン・ワーナーは米国のボルグワーナー社が株式を50%保有して設立した50:50の合弁会社でした。

先輩から聞いた話ですが、50:50の合弁会社のため決済は必ず、日本側とBW社側の両方に承認を得る必要がありました。

したがって書類も日本語と英語の並記でした。

BW社の方は、日本人は我々をだましている。隠し事をしている。となかなか承認をしてくれなかったとのことです。パイプ椅子を買うのも大変苦労したとのことです。

それなのに、「希望の丘」という大変立派なホールを建てています。

50:50の対等合弁状態を解消する為、アイシンワーナーは利益を出ないことをBW社に認識してもらい、BW社から株式を買い取るようにしました。

したがって、合弁中はアイシン・ワーナーは利益が出なかったです。しかし、生産台数はどんどん増えたので借金がとても多くなっていました。経理の方はいつも資金繰りに苦労してとのことです。

かなり前の話ですが、アイシン・ワーナーは親会社から部品を購入してました。その購入価格は親会社およびアイシン・ワーナーの利益がどれだけ出るかで調整で決められていたようです。しかしこれは当局の指摘により、是正され製造原価に基づき原価の積み上げで決めるようになったようです。つまり売手は全体に赤字にはならない。

アイシン・ワーナーはBW社からどんどん株式を購入しました。とても高い価格だったそうです。

そして、全てBW社から買い取り、社名をアイシン・エィ・ダブリュに変わりました。

すると途端にアイシン・エィ・ダブリュは利益が出るようになりました。それには営業、製造、購買なのの大変な努力の結果であります。またトップの方針も良かったです。