労災事故の損害賠リスクに関して上乗せ保険の重要性について書いていきます。 その11
損害賠償額の試算事例ケース2の内容を書きます。
ケース2(長時間労働による脳梗塞)
1 基本情報
- 被災労働者
男性/55歳(勤続30年)/妻・子二人(いずれも学生=まだまだお金がかかる)
- 事故当時の収入
月給(基本給・管理職手当・家族手当) 450,000円
残業(100時間超) 0円
賞与(4か月分) 1,800,000円
→ 年収7,200,000円
③ 被災事故
長時間労働(残業)に起因する脳梗塞によって死亡
発症前の残業時間は月100超
会社は時間管理を実施せず
※1)残業代が0円なのになぜ残業が100時間越えかというと、タイムカードあるいは会社のそのパソコンのログデータを確認すると、発症前の残業時間は月100時間超であることが判明した。
※2)会社は時間管理をきちんとやっておらず、本人の自覚に任せていた。あるいは一応、形の上では「あなた早く帰りなさいね。健康大事だから。」という。その程度の管理しかしていなかったという前提です。
④ 労災保険給付
遺族補償年金 :2,752,896円
遺族特別支給金:3,000,000円
遺族特別年金 : 550,740円
2 損害賠償額の試算
損害項目 金 額 備 考
逸失利益 49,890,960円 (注1)
死亡慰謝料 28,000,000円 (注2)
葬儀費用 1,500,000円
小 計 79,390,960円
既 払 金 -14,517,760円 (注4)
弁護士費用 6,487,320円
損害賠償金 71,360,520円
(注1)逸失利益について
(1) 基礎収入
本件では,被災労働者の年齢(55歳)に照らすと,同人の現実収入が基礎収入と認定されると考えられる。
∴ 7,200,000円
※1)今回のこの被災者の方は55歳です。そうなると、今後その劇的に上がるということは、なかなか考えにくいので事故当時の現収入が基礎収入として認定されることになってくる。
(2) 生活費控除率
被災労働者の家族構成等に照らすと,同人が一家の支柱といえる。よって,生活費控除率は30%と認定される。
∴ 30%
※1)この方は奥さんと子供2人。扶養しなければならない家族がいる。そうなると自分で使えるお金はほとんどないとなると、生活費控除率は30%。要するに、自分で使えるお金が少ないということになっているから、それぐらいしか使っていない。
(3) 中間利息控除
実務では, 54歳以上の場合は,就労可能年数の終期を平均余命年数の1/2としている。
→ 被災労働者は,事故当時,55歳であった。この場合,就労可能年数は14年であり,これに対応するライプニッツ係数は9.899である。
∴ 9.899
※1)これは非常に専門的な部分で裁判所のルールです。平均余命何分の一を認定していることになります。
(4) 計算式
7,200,000円×(1-0.3)×9.899=49,890,960円
※1)過去には争われたケースがあります。退職金もらえたはずだと、本当であれば、定年まで勤め上げたらこれだけもらえたはずなのに不幸にしてこの歳で退職することになった。その差額分の請求されたケースがあります。金額的にはそんなに多くなかったが100万円単位のものがありました。
※2)遺族側の弁護士さんがそういった辺までよく勉強されている方であれば、そういう請求をされることはある。