グラフは目標線をいれること

トヨタ生産方式の自主研活動をしていたときにアドバイザーから良く言われていたことが、「グラフには目標線を入れること。目標線のないグラフは作る意味もないし、掲示する意味もない。また、実績が大きく変動があった時などはグラフに風船を書き込むこと。」

と現場のグラフを見るたびに言われていました。

目標線のない実績だけのグラフ

たしかにグラフに目標線がないと、そのグラフはただのお飾りで気持ちが入らない。目標がはいるとグラフを見るたびに「ここまで行くぞ。やるぞ!」という気持ちになりました。

そしてグラフに目標線を入れるようにしました。

しかし最初は横一直線の目標線でした。

目標線(横一直線)が入ったグラフ

すると次に言われたのは「目標が横一直線の訳がないだろ!活動開始の時から目標に達成できるわけないだろう。よく考えろ!」

といわれたので、目標線を斜め右上がりの一直線にしてグラフに入れました。

とりあえずOKはでました。

目標線(斜め一直線)が入ったグラフ

しかし次に言われたのは、「目標が一直線のわけないだろう。改善する計画があるはずなのでその計画を織り込め。」

なるほど。改善をする計画が具体的にあったのでその効果を予測し目標を階段(ステップ)線でグラフに織り込みました。具体的な計画だけでは目標に達しないのでまだ計画のないところは気合で目標値を設定しました。

目標線(階段線)が入ったグラフ

そうした階段線の目標を立てると、具体的に改善をしなければならないかと計画が具体的になり活動に気持ちが入り、またグラフをみても達成感ややる気が出てきました。

またグラフの実績には何かあったときには風船を書き込みグラフを皆でより一層見ながら次ぎの手を考えるようになりました。

グラフだけでもこんなにモチベーションが変わることを実感したことを思い出しました。

現場に落とす指標は数か時間

目標値を現場に示すことは重要であるがその場合の指数は数または時間に絞るべきである。

それは具体的には

稼働率または可動率=時間÷時間 

不良率=数÷数 

時間当たり出来高=数÷時間

などである。ここにコストの指数をいれると、現場はとたんに他人ごとになる。

コントロールできない指数を入れ込むと作業者は関心がなくなる

例えば 時間チャージ=円÷時間

こういったコストの指数は工場の管理者向けの指数で、現場に落としても参考値にしかならない。

現場の作業者には自分でコントロールできる指数だけにすべきである。

時間なら 稼働した時間、可動すべき時間、非稼働時間、停止時間

数なら 生産した数、良品の数、不良の数 人数

などが現場の作業者が自分で管理できる指数である。

コストの例では、不良品の金額、人件費の金額、停止ロス金額などがあるが、これらは工場運営では重要かもしれないが現場作業者には理解できないのでこれを現場に示してもモチベーションアップにならない。

現場で使いやすいTPS用語辞書 や行

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・ヨーイ・ドン方式 (Simultaneous Start Time Study)   

 問題を顕在化するための方法で、サイクルごとにスタートの合図で全作業者が、各自の         作業開始点(標準作業の作業順序の一番目)より作業を一斉に開始する方法。

 1サイクルの作業を終えたところで、改めて合図により一斉に作業を始める。          

4S (Four S’s)           

 整理・整頓・清潔そして清掃の4つの日本語の表音の頭文字を示したもの。

 これは、物の管理の重要性を強調している言葉である。      

 4Sに躾(ルールや決めたことを守ること)を加えて5Sともいう。

・整理 (Seiri (Sifting))

 現場で要るものと要らないものを区分して、要らないものを即刻廃却すること。      

・整頓 (Seiton (Sorting))         

 整理し、必要として残したものを必要な時に、必要なだけ容易に取り出せたり、使いやすいように、所番地を定めて並べて置くこと。

 単純に並べて置くだけでは整列であり、整頓ではない。      

・清潔 (Seiketsu (Spick and Span))      

 整理、整頓、清掃のよい状態を維持すること。      

・清掃 (Seiso (Sweeping and Washing) 

 現場で技能員が仕事をやりやすく、安全に対しても不安がなく作業動作や歩行に支障の           ないようにきれいにすること。

現場で使いやすいTPS用語辞書 ま行

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・水すまし (Fixed Course Pick UP (Mizu-sumashi))      

 複数の前工程を指定された順に巡回し、決められた数だけ自工程の生産順序に必要な種類の部品を集め、運搬する方法。

 セット・定量・順序引取りの組み合わさった運搬。

・ムダ (Muda (Non Value Added))        

 生産現場において、付加価値を生み出さないで原価だけを高める生産の諸要素。      

1.造りすぎのムダ           

2.手待ちのムダ 

3.運搬のムダ    

4.加工そのもののムダ    

5.在庫のムダ    

6.動作のムダ    

7.不良品・手直しのムダ 

・造りすぎのムダ (Muda of Over production)    

 ジャストインタイム生産の鉄則にはずれ、必要な時よりタイミングを早く生産したり、かんばん           などに示される必要以上に生産すること及び、そのために発生する在庫をいう。

 この造りすぎのムダは、手待ち、動作のムダを隠したり、加工・運搬のムダを発生させるとともに、運搬車、パレットなどの増加という2次的ムダを発生させる為、ムダの中でも一番問題となるムダである。

・手待ちのムダ (Muda of Waiting)       

 標準作業の作業順序に従って仕事をする過程で、次の手順に進もうとしても進めない状態を手待ちといい、仕事量が少ない場合に生じることが多い。      

・運搬のムダ (Muda in Conveyance)    

 運搬そのものは製品の付加価値を高めないので本質的にはムダであるが、ジャストインタイムな生産をする為に、最小限必要な運搬以外の仮置き・積み替え・小出し・移し替えなどのムダ。

・加工のムダ (Muda in Processing)      

 工程の進みや加工品の精度などにはなんら寄与しない不必要な加工を行うこと。

・在庫のムダ (Muda of Inventry)         

 生産・運搬の仕組みによって発生する在庫(素材・工程間・完成品)。

・動作のムダ (Muda of Motion)

 生産活動で付加価値を生まない人の動き。

・不良品・手直しのムダ (Muda of Correction)   

 廃却しなければならない不良品や、手直しをしなければ製品にならない物を造ってしまうこと。          

 手直し工程、調整工程を正規工程とすることは、このムダが発生しているという感覚が薄れ、改善が進まない。

・ムラ (Mura (Unevenness))   

 製品の生産計画が一定でなく、一時的に増減変動すること。

 人の面では、ある基準に対し負荷のバラツキをいう。          

・ムリ (Overburden)   

 生産現場において、人の面では心身に過度の負担がかかることをいい、また、機械設備に関しては、それら自身が保有する能力に対して、過度の負荷をかけることをいう。

 ムダ・ムラ・ムリを総称して3ムダラリという。

・目で見る管理 (Visual Control)           

 管理・監督者が生産活動の状態が正常か異常かを目で見て即時に判断できる現場管理の           形態。     目で見る管理の方法として代表的なものに、アンドン・かんばんなどがある。

現場で使いやすいTPS用語辞書 は行

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・ハイヤー方式 (On Call Delivery)       

 運搬専従者がプレス品や鋳鍛造品などをリフトなどで1パレットずつ運搬する作業に適用する。      

 各部品を必要とする工程からの運搬依頼情報を集中管理板に表示し、表示された工程に       必要なものを1パレットだけ供給し、供給後は集中管理板前にもどり、次の運搬指示を待つシステム。

 集中管理板では、運搬依頼された情報を保持することにより、情報の先入先出しを可能とし、また、現在の在庫量に対する運搬専従者の過不足がわかり、運搬作業の効率化がはかられる。

・離れ小島 (Isolated Jobsites) 

 作業工程がレイアウト上離れて孤立していて、生産の増減に応じて他の作業者との組合せが効率的にできないライン構成をいう。

 生産変動に対応できないラインであり、少人化の阻害要因の1つである。

・はみだし品 (Overflow Parts)

 製造現場のライン側の部品棚など、指定の部品置場からはみ出して床などに置いてある部品。

・標準作業 (Standardized Work)          

 人の動きを中心として、ムダのない順序で効率的な生産をするやり方を、トヨタ生産方式では標準作業といい、タクトタイム・作業順序・標準手持ちの3要素からなる。      

・標準作業組合せ票 (Standardized Work Combination Table)

 各工程の手作業時間及び歩行時間を明らかにし、タクトタイム内で1人がどれだけの範囲の工程を担当できるかを検討するもの。また、自動送り時間を記入して、人と設備の組合せが可能かどうかも合わせて見るようにしている。   

・標準作業票 (Standardized Work Chart)         

 作業者毎の作業範囲を図示したもので、標準作業の3要素のほかに、品質確認、安全注意などの記号が記入される。標準作業票は現場の対象工程に掲示される。

・平準化 (Levelled Production (Heijunka)        

 生産するもの(売れに結びついたもの)の種類と量を平均化することをいう。          

 ジャストインタイムに生産する為の前提条件である。          

・ペースメーカー (Pacemaker)

 決められた時間に対し、その作業の1サイクル毎作業の遅れ進みが作業者、あるいは管理・監督者にわかるようにする道具である。

・ポカヨケ (Failsafe Devices (Pokayoke))         

 品質不良の発生や機械設備の故障発生を防止する為に以上の発生を防止したり、異常が発生したらラインを止める為の安価で信頼性の高い道具や工具。

1.作業者のミスを防止する仕組み 

2.作業者のミスを発見し警告する仕組み     3.品物に不具合があれば検知し、加工を始めない仕組み など

現場で使いやすいTPS用語辞書 な行

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・能率 (Productivity)  

 生産工程の生産性を評価するものさしで、下記の式で一般には表せる。      

能率=(生産実績(良品)/人員×稼働時間(工数))×(100/基準となる1人時間当たりの出来高)      

しかし、この一般式には運用の仕方によっては問題があり、分子の生産実績は

生産数=販売数   

でなければならない。販売につながらない製品を生産し能率を上げても、それは見かけの能率を上げることになり、実質的な原価低減に結びつかない。      

・真の能率 (True Efficiency)    

 売れる数量を必要最小限の人数と設備で生産し能率を上げるやり方で、実質的な原価低減に結びつくものをいう。      

・見かけの能率 (Apparent Efficiency)  

 売れ行きに関係なく、現状の人数で生産量を増やして能率を上げるやり方で、単なる計算上の能率アップを見かけの能率という。

・全体の効率と個々の能率 (Total Productivity and Independent Productivity)        

 トヨタ生産方式は、ジャストインタイムにより企業全体の効率向上を追及している。

 それに対し、個々のライン・工程・あるいは各機械設備など、前後工程に関係なく、自工程の能率だけを上げようとして得られる能率の考え方を、個々の能率という。      

 個々の能率向上だけを追及しすぎると、必要以上にものを造ったり、自工程の都合でダンゴ生産を行ったりしがちである。

・乗継運搬 (Truck Transfar System)    

 トラックの運搬作業と積み降ろしの荷役作業の役割を分離し、運転者は目的地へ運搬したらそこですでに積み込み(積み降ろし)が終わって待機しているトラックに乗り換える方法。

 この方法により、荷役作業と運搬作業を平行して行うことができ、物流のリードタイム短縮・在庫量低減が可能となる。また、少人数の運転手で多数台のトラックを使うことにより、運転手の運搬の生産性を上げることができる。   

現場で使いやすいTPS用語辞書 た行

現場で使いやすいTPS用語辞書 た行

・多回運搬 (Frequent Conveyance)      

 部品単位でみた場合の運搬頻度を多くする運搬方法をいい、前後工程の在庫量を少なくするために用いる。ただし、単に製品の運搬回数を多くし、製品の積載効率を低下させないように多回運搬するには、混載運搬をして運搬車両のトータルとしての運搬回数を増やさないような配慮が必要である。

(例)4種類の製品を運搬する場合

・タクトタイム (Tact Time)

 部品1個または1台分をどれだけの時間で生産すべきかという時間値。

タクトタイムは次の式から求める。

タクトタイム=(日当り稼働時間(定時))/(日当り必要数)

稼働時間は就業の定時間、稼動率は100%として算出する。

・多工程持ち (Multi Process Handling)

 工程順に配列された機械設備の各作業を、1人の技能員がタクトタイムに見合った分だけ行うことをいう。(縦持ちともいう)

1人で4工程を担当          

・多台持ち (Multi Machine Handling)  

 部品を加工するとき、機械設備を工程や機械の設備の類似性から同種の機械設備を配置し、1人の作業者がその作業を複数行うことをいう。(横持ちともいう)    

1人で設備4台を担当

・多能工化 (Multi Skill Development)

 1流しでかつ多工程持ちを行う為に、多種の機械設備の操作や多種の作業、担当範囲外の作業もできるように常に作業訓練をはかることをいう。生産量の変更に対しタクトタイムを毎月変え、その新しいタクトに合わせて作業範囲を変えることも容易となる。

・段取り替え時間 (段替え時間) (Set Up Time)

 段取り替え作業は、3つの作業に区分される。

外段取り:機械を停止させなくてもできる段取作業

内段取り:機械を停止させないとできない段取作業

調整:段取替後、品質の精度確保やトラブル処理の為、機械を停止して行う作業

 通常、段取り替え時間とは現時点で加工している部品の加工が終わった時から、次に生産する部品の型や刃具などを交換して次の部品の良品1個目ができるまでの時間をいう。

段取り替え時間=内段取り時間+調整時間

・定位置停止方式 (Fixed Position Stop System)

 コンベアラインで作業場のトラブル(作業遅れ、品質トラブル)などを発見した時、定位置停止用スイッチ(職制呼び出しスイッチ)を入れると、コンベアはすぐに停止しないで定められた位置まで進み、停止するようにした仕組み。

・定員制ライン (Fixed Manpower Line)

 生産量の増減があっても、その変化に対応した作業者数が増減できず、常に作業者が一定数必要なラインを定員制ラインという。

・定時不定量運搬 (Scheduled Time Unscheduled Quantity Conveyance)

 定められた時間毎に運搬する方法。従って、運搬量は定時間内の消費量次第で不定。

運搬の方法としては、定量運搬が望ましいが遠隔地の場合、運行の都合上この方法をとっている。

・定量不定時運搬 (Scheduled Quantity Unscheduled Time Conveyance)

 後工程の部品の使用が一定量に達したら、その時点で前工程へ引取りにいくやり方。

運搬効率がよく、工場内運搬の原則である。

・トヨタ生産方式 (Toyota Production System)  トヨタで行っている製造に関する方法で、ムダの徹底的排除の思想に基づいて生産の全体を通して物の造り方の合理性を追求し、品質の造り込みと合わせて原価低減などをする考え方と、それを進める総合技術をいい、ジャストインタイムと自働化を2本の柱としている。

現場で使いやすいTPS用語辞書 さ行

現場で使いやすいTPS用語辞書 さ行

・サイクルタイム (Cycle time) 

 作業者1人が受け持ち工程を決められた作業順序で作業して一巡するのに要する時間。      

・作業順序 (Working Sequence)           

 標準作業の3要素の1つで、作業者が一番効率的に良品の生産ができる作業の順序。          

・作業標準 (Operation Standards)

 標準作業を現場で正しく運営していく上で、工程図、品質チェック標準、QC工程表や安全標準などをベースとして、質・量・コスト・安全などを確保できるように各作業のやり方や条件を標準化したものの総称。          

 代表的なものとして、作業要領書・作業指導書・品質チェック要領書・刃具取替え作業要領書などがある。                    

・仕事 (Value Adding Work (Shigoto))  

 材料や部品の付加価値が高められ、工程が進むことを仕事という。

・実行タクトタイム (Actual Tact Time)

 タクトタイムは定時生産で計算するのに対し、運用上やむを得ず定時以外の時間でタクトを設定する場合がある。          

・自働化 (ニンベンの付いた自動化) (Jidoka)

 トヨタ生産方式の2本柱の1つ。             

 機械設備の異常や、品質の異常、作業遅れなどなんらかの異常が生じたら、機械設備が           自ら異常を検知し、自動停止するようにしたり、作業者自身が停止スイッチを押してラインを止められるようにすること。          

 これにより、不良の流出がなくなるとともに、異常が明確にわかり、異常の再発防止を図ることができるため、「品質を工程で造り込む」ことが可能になる。さらに、異常が発生しても自動停止するため、設備の見張りをする必要がなくなり、「省人化(工数低減)」が可能になる。      

・ジャストインタイム (Just In Time)   

 トヨタ生産方式の2本柱の1つであり、変化に対応し経営効率を高める為に、必要なものを必要な時に、必要な量だけ生産したり運搬したりする仕組みとその考え方。   

 平準化を前提とし、「後工程引取り」、「工程の流れ化」、「必要数でタクトを決める」の3つの基本原則としている。      

・順序表 (仕掛け順序表) (Production Sequence Table)

 生産を行う順序を表にしたもので、生産計画の車型比率に基づいて平準化した仕掛けの           順番を表にしたもの。      

・順引き (順序引取り) (Sequential Parts Withdrawal)

 仕掛けられる製品や部品の順番が決まっている時、前工程からその仕掛け順序どおりに           ものを引取ってくる。      

・少人化 (Flexible Manpower Line)     

 必要生産数に応じて生産性を落とすことなく、何人ででも生産できるラインを作りあげることを少人化という。

 生産の増減があってもそれに比例して作業者数が増減できず、常に作業者が一定数必要なラインを定員制ラインという。

・省人化 (Manpower Saving)   

 作業改善や設備改善により、人を一人単位で省くことを省人化という。      

・省力化 (Lobor Saving)          

 作業者が行う人手作業の一部を単に機械に置き換えることをいい、省人化できない状態。      

・生産管理板 (Performance Analysis Board)     

 各工程やラインの1時間毎の必要量、生産実績、異常内容などを記録する表示板。   

 監督者は毎時間チェックを行い、異常の再発防止策の実施と改善の効果確認を行う。

・生産指示ビラ (Specifications Manifest)          

 製品にどういう部品を取り付けるか部品の種類を記号化して、製品に貼り付ける指示紙。      

 この貼り紙の利点は物と情報が一本化していること。          

・生産のリードタイム (Production Lead Time)  

 工場が受注してから製品の出荷にいたるまでの時間。          

A:該当製品の生産指示情報の滞留時間       

B:該当製品の材料仕掛けから完成にいたるまでの時間。 (加工時間+停滞時間)   

C:該当製品の完成品の最初の1個ができてから、後工程が引取る数の完成品が出来上がるまでの時間。 (運搬数×該当製品の生産タクト)      

とすると、生産のリードタイム=A+B+Cで表される。        

・製造技術 (Operations Management Engineering)       

 ものを生産する過程で、現状の設備・材料・人をトータルとして最も効率的に使いこなす考え方と手法をトヨタでは製造技術という。

・外段取り (Off Line Set Up)     段取り作業のうち、ラインや機械設備の運転を止めないでできる型・刃具・治具類の準備、後片付け等の作業をいう。

現場で使いやすいTPS用語辞書 か行2

現場で使いやすいTPS用語辞書 か行2

・引取りかんばん (Parts Withdrawal Kanban)

 後工程が前工程へ部品を引取りにいくタイミングと、引取り量を指示するかんばんであり、工程間引取りかんばん、外注部品納入引取りかんばんがある。

・工程間引取りかんばん(運搬かんばん) (Inter Process Parts Withdrawal Kanban)

 社内で後工程が前工程から必要なものを引取る為に用いるかんばん。

・外注部品納入かんばん(外注かんばん) (Supplier Kanban)

 仕入先から納入される部品に用いられるかんばん。

 納入は仕入先が行うが、工程で外れた分だけの外注かんばんで納入される為、基本的には工程間引取りかんばんと同じ、後工程引取りができる。

・臨時かんばん (Temporary Kanban)

 型保全、機械設備の修理、そして稼働日の違いなどにより、通常の生産分より多く必要とする

部品の生産及び運搬を指示するかんばん。

 有効期限を明記し、1回だけ使用して使用後は回収する。

 赤色の斜線をいれ、他と識別する。

・かんばんサイクル (Kanban Cycle (Delivery Cycle))

 部品の納入頻度(何日に何回)とかんばんを持ち帰った便から何回遅れで納入されるかを取り決めたものである。

 かんばんサイクルは納入サイクルや、かんばん係数とも呼ばれる。

 その表示例は以下の通り。

1-4-2

1=1日に(2日の場合もある)

4=4回納入され

2=2回遅れの便で納入

QC工程表 (QC Process Chart)

 目標とする品質を工程で造り込むために、各工程の特性に合わせた管理項目を設定された規格や基準に基づき、誰がどのような方法で検査、チェックし、管理していくかなどを決めたもの。

・工程の流れ化 (Continuous Flow Processing)

 ジャストインタイム生産を実現する為の基本原則の1つであり、工程内、工程間での物の停滞をなくし、1個流し生産を行うようにすること。

・工程別能力表 (Standardized Production Capacity Sheet)

 部品を各工程で加工するとき、各工程の生産能力を表すもので、手作業時間、機械の自動送り時間及び刃具交換時間などを記入し、工程の能力を算出する為の表。

5回のなぜ (Five “Whys”)

 いわゆる5W1H (Why, What, Where, When, Who, How)が工程分析の現状調査の視点として用いられているが、それ以上に”Why”を1・2度で止めることなく、なぜ、なぜ………と5回なぜを問うことで真因を追究することをいう。

・混載運搬 (MIXED-Load Conveyance)

 1台の車両に多種類の部品を積載して運搬する方法をいう。

 この混載運搬により、運搬効率を低下させずに(運搬車両のトータルとしての運行回数を増やさずに)、多回運搬ができ、前後工程の在庫量を少なくすることができる。また、生産変動に対し、運行回数の増減も容易になる。

現場で使いやすいTPS用語辞書 か行1

現場で使いやすいTPS用語辞書 か行1

・改善 (Kaizen)          

 人(労力)、物(材料使用量及び材料・製品の在庫)、設備あるいは生産の仕組み等に関するムダ(いたるところに存在している)を見つけ、知恵を出し、できる限り費用をかけずに迅速にムダを1つずつ排除していく1連の活動。

 人作業における改善では、設備改善よりも作業改善を優先して行わなくてはならない。          

なお、改善は特定の人の業務ではなく、全社員がそれぞれの立場で行うことができるもの           であり、行うべきもの。   

・可動率 (Operational Availability)      

 設備を運転したい時(かんばんが来た時)に、正常に動いてくれる状態の確率。

設備とその保全によってもたらされる信頼性に相当する。      

(常に100%が理想)       

・稼動率 (Rate of Operation)   

 後工程に必要な(売れに結びついた)生産量を加工するために、その設備能力でフル操業した時の、定時能力に対する需要の割合。

 売れ行きによって、稼動率は決まる。      

・かんばん (Kanban)  

 ジャストインタイム生産を実現する為の管理の道具。          

かんばんの役割は次の通りである。

1.生産、運搬の指示情報 

2.目で見る管理の道具    

2-1.造り過ぎの抑制        

2-2.工程の遅れ進みの検知            

3.工程・作業改善の道具 

かんばんの機能別分類は次の通りである。   

かんばん・・・仕掛けかんばん ・・・・工程内かんばん

                ・・・・信号かんばん

      ・・・引取りかんばん・・・・工程間引取りかんばん(運搬かんばん)

                                       ・・・・外注部品納入かんばん(外注かんばん)

・仕掛けかんばん (Production Instruction Kanban)

 生産工程での生産着手(仕掛け)指示に使うかんばんであり、工程内かんばんと信号かんばんがある。

・工程内かんばん (Intra Process Kanban)

 工程内の仕掛け指示に用いるかんばん。

 後工程に引取られた量だけを、引取った順に後補充生産するよう仕掛ける為に使うかんばん。

・信号かんばん (Signal Kanban)

 1つのラインで多種類の品物を加工しており、段取り替えに若干の時間を要するロット生産工程での仕掛けに用いるかんばん。

 三角形をしているので、通称三角かんばんと呼ばれる。

 プレス、ダイキャスト、樹脂成形工程などでおもに用いられる。

現場で使いやすいTPS用語辞書 あ行

現場で使いやすいTPS用語辞書 あ行

・後工程引取り (Pull System of Production)

 ジャストインタイムに生産する為の3つの基本原則の1つであり、後工程が必要な時に、必要なものを、必要なだけ前工程から引取り、前工程は引取られた分だけ生産する仕組み。

・後補充(生産) (Fill Up System of Production)

 前工程が最小限のその工程の完成品在庫(ストア)を持ち、後工程に引取られた分だけ種類毎に造って補充する方法。

・アンドン (Andon)

 関係者へのアクションを促す為の情報の窓で、現時点の異常場所を一目で判断できるようにした電光表示盤。

 異常表示のほかに作業の指示(品質チェック、刃具交換、部品運搬など)、進度表示する

ものもある。

1個流し(生産) (One Piece at a Time Production)

 工程順に1個又は1台ずつ加工・組付けをし、1個ずつ次工程に流すやり方。

・内段取り (On Line Set Up)

 段取り替え作業うち、ラインや機械設備の運転を止めなければできない、型・刃具、そして治具類の交換などの作業。

AB制御 (Two Piont Control)

 工程あるいは工程内の標準手持ち量が常に一定に保持されているように、各搬送機の動いてもよい条件及び、工程から製品を搬送できる条件を2ヵ所(A点・B点)の製品の有無により制御する仕組み。

現場で使いやすいTPS用語辞書

現場で使いやすいTPS用語辞書 あいうえお順です。

目次

あ行   か行   さ行

・後工程引取り    ・改善         ・サイクルタイム

・後補充(生産)   ・可動率        ・作業順序

・アンドン      ・稼動率        ・作業標準

・1個流し(生産)  ・かんばん       ・仕事

・内段取り      ・仕掛かんばん     ・実行タクトタイム

・AB制御       ・工程内かんばん    ・自働化

           ・信号かんばん     ・ジャストインタイム

           ・引取りかんばん    ・順序表

           ・運搬かんばん     ・順引き

           ・外注かんばん     ・少人化

           ・臨時かんばん     ・省人化

           ・かんばんサイクル   ・生産管理版

           ・QC工程表      ・(生産)指示ビラ

           ・工程の流れ化     ・生産のリードタイム

           ・工程能力表      ・外段取り

           ・5回のなぜ

           ・混載運搬

た行   な行   は行

・多回運搬      ・能率

・タクトタイム    ・真の能率       ・ハイヤー方式

・多工程持ち     ・見かけの能率     ・離れ小島

・多台持ち      ・全体の能率と個々の能率・はみ出し品

・多能工化      ・乗継運搬       ・標準作業

・段取替(時間)               ・標準作業組合せ票

・定位置停止方式               ・標準作業票

・定員制ライン                ・平準化

・定時不定量運搬               ・ペースメーカー

・定量不定時運搬               ・ポカヨケ

・トヨタ生産方式

ま行   や行

・水すまし      ・ヨーイ・ドン方式

・ムダ        ・4S(5S)

・造りすぎのムダ   ・整理

・手持ちのムダ    ・整頓

・運搬のムダ     ・清潔

・加工のムダ     ・清掃

・在庫のムダ

・動作のムダ

・不良品のムダ、手直しのムダ

・ムラ

・ムリ

・目で見る管理

銀屋洋さんの講演会 その4

トヨタ生産方式の直系の銀屋 洋さんの講演会の内容 その4です。

生産の効率化において、平準化がとても大事。トヨタ生産方式の基本である。

前工程から団子で受注が来たら自工程で平準化する。

場合にっては販売店での販売台数も平準化させる。

平準化できなところがカンバンを使うな。使っとると言うな!仕入先にカンバンを振り出すな!

生産量は変動するものである。

そのため人の増減できるフレキシビリティなラインにすべきである。

目なしの少人化に取り組み目ありの省人化にし、また目なしの少人化を繰り返していく。

いつも物作りについて考えて考えて考え抜け。

問題を顕在化する。見えるようにする。隠すな。

見たこと、経験したことのないことは人は理解できない。

だから実践あるのみ。実践を積んで経験し理解する。

以上が銀屋洋さんの講演の内容だったと思います。

後半の方は当時の私にとっては内容のレベルが高かく

理解が乏しかったようで内容が雑になってしまいました。

銀屋洋さんの講演会 その3

トヨタ生産方式の直系の銀屋 洋さんの講演会の内容 その3です。

当時USAは日本と貿易摩擦で大変もめていた。

そこでトヨタ自動車はゼネラルモーターと合弁で北米のウエストバージニアに

Toyota Motor Manufacturing, West Virginia, Inc.(以下、TMMWV)の自動車生産工場を作ることになった。

トヨタ自動車の張富士夫(後の社長)が赴任となった。

張富士夫さんも大野耐一さんから直接指導を受けた人であり、

銀屋さんにトヨタ生産方式の導入に支援に来させていた。文化の違いで大変苦労したようでした。

そこで、アメリカ人と日本人の常識の差を認識した。

繰り返し作業のラインで日本人は手待ちが発生すると、多くの真面目な人が

その手待ちの間で、コチョコチョと掃除やら今できることをやるが、

アメリカ人は手待ちが発生しても何もせず、ただぼーっと立っているのみ。

手待ちが発生したとき、日本人のように掃除などできることをするのが良いか、

それともアメリカ人のようにぼーっと立っているのが良いか?

日本人の常識では、手待ちの時でも手を動かすのが常識で手を動かすと思うが、

アメリカ人のように何もせずにぼーっと立っているべきである。

なぜか。

アメリカ人のようにぼーっと立っていると手待ちが発生したと問題が明確にわかる。

しかし、日本人ように手待ちの時にコチョコチョ作業をさせると、本来すべき作業か、

やらなくても良い作業かわからなくなり問題が見えなくなる。

問題がはっきりとあることが分かれば改善に取り掛かるが、問題が見えないと改善をしない。

アメリカ人は決められたことはしっかりやる。何度でも繰り返し同じ作業をきっちりやる。

手待ちが発生するのは、決めたルール=標準作業が悪いのだ。

とのことでした。

銀屋洋さんの講演会 その2

トヨタ生産方式の直系の銀屋 洋さんの講演会の内容 その2です。

インドのことであるが、インドはヒンドゥー教カースト制度である。

最下位のシュードラは奴隷である。そのカースト制度の最下位からさらに外れた身分のダリットがある。

当時ダリットとして生まれた人は乞食や見世者でご飯を食べるしかなかった。

ある、ダリットの夫婦に子供が生まれました。五体満足に生まれた。

しかし、その夫婦は大変悲しんた。

「かわいいこの子は、ダリットとして生まれたのに五体満足でどうやって生きてゆけば良いのか。」

と。そしてその夫婦は自分の子供が一人で生きていけるように、

その子の両腕を切ってしまい、一人で生きていけるように見世者になるようにした。

その夫婦なりの愛情であるが。我々の常識では考えられない。

しかし、彼らの中ではそれが常識であり、この常識のギャップを埋めるのは簡単ではないし、

普段では常識のギャップがあることに気づかないことが多い。

銀屋洋さんの講演会 その1

トヨタ生産方式の直系の銀屋 洋さんの講演会の内容 その1です。

入社数年の時にトヨタ自動車の銀屋洋さんが会社にてトヨタ生産方式について講演会をしていただいたことがあります。

かなり前なのですが、自分としても大変勉強になったので、うすらぼけながら内容を書いていきます。

当時は銀屋主査だったと思いますが、後にトヨタ自動車の役員になっています。

銀屋さんの指導の下、その会社で指導を受けている人が沢山いましたが、

「銀屋さんはとても怖い人。」と言っていました。

ただし、「役者でもある。物作りで良いことをすれば、とても喜んでくれる。涙を流して喜んでくれたことがある。」

とのことです。物作りで感激して涙を流すなんて考えられないが、流したらしい。

いつもは厳しい方が、喜んでもらえればやりがいがありますな。惚れてしまいますな。

銀屋さんは、トヨタ生産方式を生んだ大野耐一の一番弟子の鈴村喜久雄から直接指導受けた方です。

その銀屋さんが指導された方が、林南八さんや坂巻さんです。

現役の方からしたら、林さんや坂巻さんもとても恐ろしくて雲の上の方のようです。

10年ほど前に林南八さんの講演会に行ったことがありますが、

聴講者は名だたるトヨタ系各社の偉そうな方が沢山おり会場はぎっしりで立ち見状態でした。

遠い昔しの記憶を思い出しながら少し脚色が入りますが、講演会の内容に入ります。

まず最初に話したのは常識のギャップです。

奥田 碩の講演会 その19まとめ

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その19。まとめです。

この講演の内容はとても良かったと思います。講演をしていただいた企業の従業員にとっても。またその従業員でなく一般市民として聴いても良かった内容だと思います。

まず経済産業の流れとしてアルビン・トフラーの「第三の波」を紹介して、

第一の波:農業革命、第二の波:産業革命、第三の波:情報革命を上げ今後の狙いを最初に明示しておいて、

次に日本がこのままではまずく、改革を断行しなければならない。その改革の課題を3つ挙げている。

第1は社会の急速な変化の中で、失われつつある日本人の自信あるいや活力を回復。

第2は高度情報化社会への対応。

第3は国際化への対応。

その3つの課題を解決するのに民間企業の役割が大きい。役人に任しておけない。我々が頑張るんだ!

我々グループが一致団結して他の連合に負けずに取り組みが必要である。

北米市場、欧州市場、アジア市場、日本国内市場の4極に分け分析し攻めどころを分けている。

課題を解決するために取り組みを4つ挙げ居ている。

  • 技術革新 ②コスト競争力を軸とした企業体質の強化 ③グローバルマネージメントの改革 ④グループの事業構造の再構築
  • 技術革新では、地球環境問題を解決する低燃費のハイブリッドなどの技術革新をしてデファクトスタンダードとなる。及び情報化へ対応しITSの推進。いまでは自動運転といった方が分かり易いと思います。
  • コスト競争力を軸とした企業体質の強化では、モノづくりでは永遠のテーマである。

開発期間の短縮、あるいはプラットフォームの総合、部品の共通化モジュール化、システム化の推進さらには研究開発費、設備投資等の固定費の削減をする。

  • グローバルマネージメントの改革では、日米欧アジアの4極とグローバル本社といった構想のもとに、現地で対応できるものは現地に任せてグローバル本社は全体最適という観点から地域別、事業別あるいは車種別をスルーに管理して経営資源の有効活用する。
  • グループの事業構造の再構築では、技術・品質・生産・販売・流通あらゆる分野で他の追随を許さない、コアコンピタンスの確立ことができる企業構造に転換していかなければならない。そのためにグループの事業構造の最適化に向けて取り組む必要があります。

そのグループの事業構造の最適化の考えが現在も進められている。記憶に新しい所では、豊田工機と光洋精工の合併のJTEKTやアイシン精機とアイシンAWの統合。である。

最後に豊田綱領を改めて確認し、成功の囚人にはなるな。変えないことが一番悪い。

改めて身に染みる内容でした。     おしまい。

奥田 碩の講演会 その18

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その18。今までどこにも出てないので大変貴重ですよ。

色々と申し上げましたが最後に申し上げたいことは、私どもトヨタグループが創業以来企業行動の原点として参りました経営理念は、しっかりと今後も受け継ぎまして実践していく必要があるとそういうことであります。

ご存知のように豊田綱領では企業の役割として

  • 一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
  • 一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
  • 一、華美を戒め、質実剛健たるべし
  • 一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
  • 一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし

「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」とこういうふうになっております。つまり企業は社会の公器でありまして目先の利益を追求するだけでは企業の存在意義はない。社会への貢献を果たしてこそ存在意義がある。とこういう風に明確に取り組んでおります。

またものづくりについては「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」

常に研究に努めることによりまして創造性を磨き時流に先駆けたものづくりに努めるということの重要性を強調しております。

企業として社会に貢献するということは、まずお客様第一主義、現地現物主義に徹しまして常に良品廉価な商品をお客様に提供して、また従業員には雇用機会と生きがい、あるいは働きがい。こういう職場のある職場を提供して株主に対しては適正、配当払い。また国にはしっかりと税金を払う。そして良き企業市民として地域社会とともに発展したことによりまして豊かな社会づくりに貢献していくことができるというわけであります。

私どもトヨタグループを今日の発展に導かれた諸先輩方は、創業以来この理念を企業活動の基本として厳しい環境の中で果敢に挑戦してその都度新しい道を切り開いてこられました。

現在のグローバル化の時代においては私ども一人ひとりが地球規模でものを考え行動していかなくてはならない時代であります。

96年の1月に私どもが将来目指すべき方向として掲げた2005年ビジョンにおいても社会への貢献度が、トヨタの成長の糧になる。とこういうこれまでの基本理念を踏襲しております。

私はこの理念を守りまして、いく他の諸先輩が厳しい環境に挑戦され大胆な発想と決断によって実践された時流に先駆けたものづくりの精神をしっかりと受け継ぎ、グローバルにこれを具現化していくということによりましてトヨタはグローバル企業としての確固としたアイデンティティを確立して成長を果たしてそれを確実に後輩たちに引き継いでいく。とそういうことになると思います。

それが私共の使命であるとこういうふうに考えております。

今私どもはこういったグローバル経営のほんの入り口に差し掛かっているに過ぎず、よく言われるヒト・モノ・カネそして全体の経営という面で従来の延長戦ではとても越えられない高いハードルがこれからいくつもを待ち構えたわけでございました。

改革の手を片時も緩めるわけにはいかないというわけであります。

私は社内に対して常に成功の囚人にはなるな。変えないことが一番悪い。改革するためには今までの仕組みをすべて否定して、それをゼロベースから発想をしてかかれ。という風に言ってまいりました。

奥田 碩の講演会 その17

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その17。今までどこにも出てないので大変貴重ですよ。

四つ目はグループ総合力の強化に向けたグループの事業構造の再構築ということであります。

先ほども触れましたように国際的な合従連合は進みまして、将来は全世界で4,5社しか生き残れない。

こういう風に予想される超競争はまさにグループ対グループの競争になると思います。

言葉を変えて申し上げますと、トヨタグループの固い結束力と総合力がますます問われるわけでありまして、技術・品質・生産・販売・流通こういったあらゆる分野で他社にマネのできない革新的な競争力を確立していると共に高い付加価値を生み出し確実に収益に結び付けることができる。そういうことができる企業構造に転換していかなければならないわけである。

そのためにグループの事業構造の最適化に向けて取り組む必要があります。

まずグループ各社の皆さん方にはそれぞれが他の追随を許さない、コアコンピタンスの確立とコスト競争力の強化に取り組んでいたということが必要であります。

特にこの会社には現在世界ナンバーワンの〇〇〇機を始めから△△△△△分野でも世界の技術革新をリードして私どもの次世代モビリティ開発のデファクトスタンダード獲得に向けて、その先兵の役割を果たしていただいていただきたい。このようにお願いしたいと思います。

今後の自動車産業の競争力を左右する環境・安全・情報などの重要技術開発分野でのデファクトスタンダード獲得競争とモジュール化、システム化こういったものの推進をより一層のコスト競争力の強化を図っていくために現在、技術・調達分野でトヨタグループで協業体制を進めておりますが、今後はさらにこれを強化してトヨタ車の革新的な性能向上、あるいは開発の効率化、低コスト化の実現に向けてグループ一丸となって進めていく必要がある。とこのように考えております。

生産につきましても、もちろんコストと効率化。あるいは需要変動へのフレキシブルな対応などの観点からボディメーカーと私どもの内製工場を含めてグループ全体として最もベストな体勢を再構築していく必要があると考えております。

またダイハツさん、日野さんとの連携を強化して最終的に国内関係シアで40%以上という目標達成に向けて頑張っていきたい。というふうに考えております。

繰り返しになりますが、これからはグループ対グループの競争の時代でありましてグループ一体となって結束力を高めて総合力の強化を図っていかなくてはならない。そういう時代であります。

私どもが世界市場のメジャープレイヤーを目指すという目標に向けて4点お話しいたしましたが、申し上げるまでもなく取り組みにあたってはスピードということが最も重要なことであります。

論より実行すること。熟慮することよりもむしろ拙速。そして場合によっては走りながら考えて判断し、また速やかに実行に移していくと。そういうことが必要であります。

これを私共経営者はもとより従業員一人一人が日々の業務において実践すること。

そういうことが何より重要である。とそういう風に思っております。

奥田 碩の講演会 その16

奥田 碩(おくだ ひろし)さんの講演会 その16。今までどこにも出てないので大変貴重ですよ。

三つめはグローバルマネージメントの改革ということであります。

先ほども触れましたように今や販売・生産そして収益の上とは大きく海外に依存している。とそういう状況になっておりまして、販売目標の達成や収益確保という面ではマネージメントもグローバルに全体最適を目指した意思決定がスピーディーになされるということは不可欠あります。

迅速な意思決定にはグローバル組織の責任と権限が明確でなくてはならないというわけであります。

現在日米欧とアジアとこの4極とグローバル本社といった構想のもとに、現地で対応できるものは可能な限り現地に任せてグローバル本社は全体最適という観点から地域別、事業別あるいは車種別をスルーに管理して経営資源の有効活用。

こういった側面から即座に意思決定が出せる体制の構築に向けての取り組みがトヨタでは進んでおります。

収益任責任などは曖昧な現在の機能別組織を見直して、責任の所在が明確でしっかりと成果が評価できる、わかりやすいマネージメント単位の組織に変革していく必要があるからであります。

マネージメントの改革は単に私ども内部のオペレーションの実行だけでいくという面だけが重要なのではなく、私共の資産効率、投資効率を向上させて株主に評価してもらい、また経営の安定を図っていくという面でも極めて重要であります。

もはやメインバンク制とかあるいは株式持ち合い、こういう仕組みは崩壊しまして企業が自己責任のもとに直接資金を市場から調達する。こういう時代になっております。

経営の安定を守ってくれるのは安定株主であります。そのためにはグローバルに資産効率あるいは投資効率を高めて市場から評価される企業となっていかなくてはならないというわけでありますが、本年10月私どもがニューヨークとロンドン市場に上場したのはこれはグローバル企業として生き残っていくために避けて通れない道であると判断して決断した次第であります。

私どもの経営を理解して評価してくれるたくさんの世界中の安定株主を確保するためにもマネジメントの改革は一刻も早く実現していたではない。そういう課題であると考えております。