労災事故の損害賠リスクに関して上乗せ保険の重要性について書いていきます。 その13
損害賠償額の試算事例ケース3の内容を書きます。
ケース3(取締役の工場での被災事故)
1 基本情報
① 被災者(常務取締役)
男性/55歳(勤続30年)/妻・子二人(いずれも学生)
同族ではない。株式保有なし
※1)常務取締役であり従業員ではない。労災保険特別加入していない。要するに労災保険入っていないケースがあります。
② 事故当時の収入
月給(基本給) 500,000円
賞与(4か月分) 2,000,000円
→ 年収8,000,000円
- 被災事故
工場における被災事故。(機械に撒きこまれた)
ICUで1か月間にわたって治療を受けてきたが,死亡。
※1)ケース1や2と異なり治療をしてきました。生存している期間がありました。その間の治療費は実費がかかります。
④ 労災保険給付
特別加入なし
2 損害賠償額の試算
損害項目 金 額 備 考
治療費 ○○円 治療費(実費)
※1)ICUは一日、いくらかかるか予想できない。ケースによっては一か月間で何100万円単位の治療費が発生しているというケースはある。
入院雑費 45,000円 =1,500円×30日
※2)入院雑費、入院付添費は定型的に認定されている金額です。定型的というのは。この被災された方のご遺族に弁護士さんがついたら当然請求してくる項目である。
入院付添費 195,000円 =6,500円×30日
休業損害 450,000円 入院中の所得補償
※3)亡くなるまでの間、当然働けなかったから、その分に対する補償です。
傷害慰謝料 530,000円 入院1月に対応する慰謝料
※4)亡くなるまでの怪我に対する痛みつらさなどの精神的苦痛に対する慰謝料です。
逸失利益 55,434,400 円 (注1)
死亡慰謝料 28,000,000円
※5)亡くなるまでにある程度の時間が長かったという場合は慰謝料葬儀費用以外の損害も発生し、これも当然賠償の対象になってくる。
葬儀費用 1,500,000円
小 計 86,154,400円
既 払 金 0円
※6)この方は、特別加入していませんので労災の支給は無いので既払いは全くなくゼロです。
つまり発生した損害がそのまま請求されることになります。
弁護士費用 8,615,440円
損害賠償金 94,769,840円
※7)亡くなるまで時間がかかることはまあまああります。その間、どうやってケアするのかっていうところがあります。損害賠償、お金の問題もさることながら会社の担当者の方がお見舞いに行ったり、ご家族に対するケアをしたりとか、そういうのも当然あります。辛い話であるがそこに注力をしないといけないと思います。
(注1)逸失利益について
(1) 基礎収入
本件では,被災労働者の年齢(55歳)に照らすと,同人の現実収入が基礎収入と認定されると考えられる。
∴ 8,000,000円
(2) 生活費控除率
被災労働者の家族構成等に照らすと,同人が一家の支柱といえる。よって,生活費控除率は30%と認定される。
∴ 30%
(3) 中間利息控除
実務では, 54歳以上の場合は,就労可能年数の終期を平均余命年数の1/2としている。
→ 被災労働者は,事故当時,55歳であった。この場合,就労可能年数は14年であり,これに対応するライプニッツ係数は9.899である。
∴ 9.899
(4) 計算式
8,000,000円×(1-0.3)×9.899=55,434,400円
※1)被害者側が弁護士をたてもめますと妥結に時間がかかり遅延損害金がどんどん増えます。時間が経てば経つほどの元となる金額が大きいから遅延損害金がどんどん増えます。