中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その9

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その9

(3)そのシステムはどの様に確立しましたか?

 この質問に対し、受注先の支援を受けたと答えた企業が図 4.2.3.1に示すように最も多く、一般企業で63.6%、M/P参加企業で62.5%とほぼ同数、自社で立ち上げたと答えた企業がそれぞれ18.2%、20%、ソフトハウスに依頼した企業は13.6%、10%である。

 これを従業員の数で見ると、図4.2.3.2に示すように10~99人、の企業が多い。

(4)コンピューターシステムの運用について

 コンピューターシステムの運用について、以下について尋ねた。

  • 自社にコンピューター部門を持っている(図では自社に部門ありと記す)
  • 自社のコンピューターに詳しい人をあてている(社内の人と記す)
  • 経営者自身が行っている(経営者自身)
  • 外部に依頼している(外部に依頼)

 その結果、図4.2.4.1に示すように、自社のコンピューターに詳しい人をあてているが一番多く、ついで、外部に依頼している、自社にコンピューター部門を持っているはほぼ20%で、経営者自身が行っているは13%程度である。

 これを従業員の規模で見ると、自社のコンピューターに詳しい人をあてているは10~49人、が最も多く(13.3%)、従業員規模が大きくなるに従って少なくなっている。

 一方、自社にコンピューター部門を持っている企業は従業員規模が大きくなるに従ってふえている。又、経営者自身が行っているは9人以下の企業が最も多く(5.6%)、従業員規模が大きくなるに従って,少なくなっている。これらは当然予想されたとおりの結果であった。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その8

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その8

(1)コンピューターによるオンライン受発注システムを利用していますか?

 この質問に対し、一般企業では70%、M/P参加企業で60%であった。これを従業員の規模で見ると、図4.2.1.1に示すように、一般企業では10~49人と100~299人規模の企業が31.6%で、M/P参加企業は、50~99人が41.2%、ついで10~49人が35.7%、9人以下が17.6%であった。

 業種別で見ると、一般企業では、図4.2.1.2に示すように、輸送用機械・部品製造業(35%)、電気機械(15%)、一般機械(10%)となっている。

 M/P参加企業では、一般機械(23.7%)、輸送用機械(21.1%)、電気機械(18.4%)となっている。これらの業種の納入先は大企業が多く、親企業主導のいわゆるバイヤー型の納入側の企業と考えられる。

(2)そのシステムは次のどれですか?

 この質問に対し、図 4.2.2.1 に示すように一般企業では66.7%の企業が特定の企業と結ばれた専用システム、29.7%がインターネットと答えている。これに対し、M/P参加企業では、43.2%の企業が特定の企業と結ばれた専用システム、50%がインターネットと答えている。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その7

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その7

第4章 アンケート調査結果と分析

1.調査した企業について

 調査は中部地方の中小企業170社とマーケットプレース(以降M/Pと記す)に参加している企業217社にアンケートをお願いした。表4.1.1に示すように、一般企業の回答率は15.9%、一方、M/Pに参加している企業は30%と高い回収率であった。こういった調査に対し、M/Pに参加している企業は、一般企業よりも高い関心を持っていることが伺える。

 これらの企業について、従業員規模別で表したのが 図4.1.1で、10~49人の企業の回収率が一番高く、続いて、50~99人、100~299人、9人以下となっている。

 業種別で見ると、図 4.1.2に示すように、一般機械・部品製造業が最も高く、輸送機械・部品製造業、電気機械・部品製造業の順である。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その6

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その6

第3章  今回調査に至った経緯

1.業態および業務内容の変化

第1章で述べたようにIT革命、ネット革命により社会環境が大きく変化しようとしている。特に流通業では多くのマスコミが報じているe-ビジネス関連記事などに見られるように、B2CコマースやサプライチェーンマネジメントなどITを活用して中間卸の無用化論など業態および業務内容が大きく変わろうとしている。

また、製造業においてはアメリカ大手自動車メーカーであるダイムラークライスラー、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ等が「コビシント(Covisint)」という名のネット購買プラットホームを計画中であり、これにヨーロッパや国内の自動車メーカーも参加の意思表示をしており、さらに国内多くの大手家電メーカーは既にネット調達を実施しており大手製造業においても業務内容が変化している状況である。

従って、これらのメーカーに部品や製品を供給している企業(当然多くの中小企業が含まれる)にとってもこれに対応して行かなければ、やがて淘汰されることが予想される。

2.調査の実施

実際に我が国中小企業の製造業においては電子商取引の活用により、具体的には近年どのような影響又は変化が出ているかを、中部地方を中心とし製造業の中小企業を対象として実態調査することとした。

調査方法としては、当チームの構成メンバーは各々の専門分野を持った独立したプロのコンサルタント及び企業内診断士であり、それぞれの専門知識を活かしメンバーの中で討論した結果次のように調査手順を決め実施した。

3.調査手順

(1)アンケート調査

  • 一般の中小製造業の実態を把握するため、当地方の中小企業リストより170社にアンケート用紙を」送付又は電子メールで送信して回答していただいた。その結果27社回答があった(回収率:16%)。
  • 第2章で述べたe―ビシネスの分類におけるマーケットプレースに参加している企業の実態を把握するため、中小企業を主体としたマーケットプレースに登録している企業から中部地方の企業217社に①と同じアンケートをお願いした。回答していただいた企業数は65社であった(回収率:30%)。

(2)代表事例(中小企業側)の実態調査

 アンケート結果の中から積極的にITの活用により業務を拡大しようとしている中小企業3社を抜粋し、更なる具体的な企業内容および電子商取引の活用状況を把握する為に、直接メンバーがその中小企業へ訪問しヒアリングした。

(3)ネット調達側の実態調査

 第2章で述べたe―ビシネスの分類におけるバイヤー型ネットワークの実態を把握するため、まず、中小企業に大きく影響を与える納入先である大手企業でネット調達を実施又は計画中の企業3社(この内容は第2章で述べた3社にあたる)を訪問し、ネット調達の実状を調査した。

アンケートを出した中小製造企業の多くは納入側としてこの中に含まれると考えられる。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その5

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その5

.B2Bビジネスに内在する問題点と将来への方向性

バイヤー型モデルおよびマーケットプレース型モデルに内在する問題点とその方向性について考察する。

(1)バイヤー型モデルに内在する問題点と方向性

このモデルにおいて、一般的にバイヤーは基本的に大手企業であり、セラーは資材の納入業者であると想定される。中小企業はセラーにあたる。この場合、Netを開設し運営にあたるのはバイヤーである大手企業である。バイヤーである大手企業の第1の目的は、従来の固定的取引関係の枠を外し、多くの引合い案件を獲得することによる、仕入価格の引下げであると考えられる。バイヤーである大手企業と従来から安定的な取引関係にあったセラーである中小企業は、新たな競争相手の出現により、激しい価格競争にさらされることになる。これにより、長年かかってサプライヤーとの間に築いてきた、友好かつ信頼的ともいえる戦略的関係を真っ向から覆すことになりうる。その意味で、大手企業のあらゆる部分でこのモデルが採用されていくことは必ずしもその企業の戦略上好ましいとは言えないものと考えられる。あまり専門的に特化しないか、技術的に成熟した原材料や部品等の製造財や、MRO(Maintenance, Repair and Operating)と呼ばれる消耗品や各種サービス等の非製造財が中心となろう。今後、大手バイヤーがNet調達をさらに進めていくことが考えられるが、中小製造業においては、これらの特質を持った製品・サービスを展開することが有効であると考えられる。

(2)マーケットプレース型モデルに内在する問題点と方向性

このモデルは、中小製造業がバイヤー、セラー双方に参加しうる形態であると考えられる。Netの主催者は必ずしもバイヤーとセラーから中立的なものであるとは限らない。このモデルにおいても、一般的にオープンな競争状態により価格の低下が起きる。このような価格主導型のサイトでは、セラーに利幅が少ない。どうしてもバイヤーに偏った取引形態になりがちである。セラーにも強い魅力がが働かなければ永続的なサイトの運営を維持することはできない可能性がある。これらの懸念に対し、マーケットプレース型サイトの今後の方向性について、中小製造業が対象となると考えられるものを考察する。

ひとつは、単純な取引から複雑な取引を取り扱うようにすることである。複雑な製品やサービスをオンラインで購入する際、買い手が必要とする情報収集や分析を手助けする企業(スペシャリスト・オリジネーター(注1))が、Net主催者として活躍するものである。あるサイトがその事例と言える(注2)。これは、セラー企業の技術や生産能力を紹介し検索する工場検索エンジン、「物づくり掲示板」と呼ばれる関係業者間のコミュニケーションページ、および工作機械メーカー等の情報ページからなる。2000年11月現在、登録企業数が5,000社を超えている工場検索エンジンには、登録企業の金属加工における専門的かつ詳細な分類が800項目以上あり、買い手である発注企業が必要とする情報収集の手助けを行う機能を有しているといえる。

 もう一つは、取引ビジネスからソリューション・ビジネスへの変化である。これをソリューション・プロバイダーという(注1)。これは、セラー側が運営するものと、セラーでもバイヤーでもない中立的な第三者が運営するポータルサイト(インターネットの利用者が情報を探すときに最初にアクセスする場所)に大別される。サプライヤーが運営するものの例としては、ある米国工作機械メーカーが運営するものがある(注3)。これは、バイヤーが必要とする加工物の材質、形状、品質等を詳細に分類された選択肢から選ぶと、最適な加工条件や工具および冷却液等の副資材が示され、その場で注文できるというページが設けられている。また、工具破損等のトラブルFAQ(注4)も設置されている。また、第三者が運営するポータルサイトとしては次のような機能を有するものが想定できる。たとえば、バイヤーはある最終製品のCADの図面データ、希望コスト、納期などの情報をNetを介して入札する。サイト運営者は必要な工程や原材料を設計し、それぞれの専門業者をコーディネートし、サイト上に取引き案件として入札する。これに対し、仕事を探しに来たセラーは自分の引き受け可能な案件に入札し、入札情報を見て、バイヤーは最適な業者を選択する仕組みである。これはまだ事例として紹介できるものは見つからなかったが、今後の方向性として有効な形態の一つではないかと考えられる。

 

(注1)ディビッド・モリソン&リチャード・ワイズ;B2Bの近未来:ソリューション・ビジネスへの進化/ハーバード・ビジネス・レビュー 2000年12月号,ダイヤモンド社

(注2)(社)中小企業研究所;事例30 日本の金型職人集団が世界に向けて発信/徹底取材!!eビジネスベストサイト 2000年版,同友館

(注3)http://www.milpro.com/index.htm

(注4)Frequent Answer & Question よくある質問と回答

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その4

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その4

2.バイヤー型モデルの事例

 中部地区の大手企業の主催するモデルとして3例を紹介する。最初の2例は、引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例、3つ目は発注情報の交換にNetを活用する例である。どの例も、従来の固定的なネットワークから、その範囲の拡大を意図しようとするものと見られるが、現時点において、本格的なNet活用段階に至っているものではない。その意味で各社とも模索段階にあると見られる。

(1)引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例

図2.2)引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例

これは、引合い、見積り情報の交換にNetを活用している例である、事例として、中部地区を拠点とするA社、B社を紹介する。両社の概要は以下の通りである。

  • A社概要
  • 業種:自動車部品製造業
  • 従業員数:6,500人
  • B社概要
  • 業種:工作機械 他 製造業
  • 従業員数:4,000人

この事例では、バイヤー側(A社、B社)はインターネット上のホームページに自社の調達対象の概略や基本的な取引き条件等の公開できる情報を掲載する。それを見た、新規取引き希望セラーは、所定の連絡先へコンタクトする。ここで初期段階の条件を双方確認のうえ、バイヤー側は新規取引き希望セラーへ別途設けられている、セキュリティを確保したサイトへのアクセス権限を与える。ここには、図面等詳細な仕様情報が掲載されており、新規取引き希望セラーはこのサイトを通じて見積り等の情報を伝達する。価格交渉後、取引きが決定したら、VAN等の従来の手段により発注情報を配信する。取引き実績ができたセラーは以後、セキュリティ確保のサイトにより、見積り等の情報交換を行う。

A社の場合、対象としている品目は、現在は、治具・刃具・設備・原材料である。このシステムは既に稼動中であり、3年以内に2,600億円にものぼる全対象品目をこのシステムにのせる計画である。

B社の場合、現在システムを構築中であり、2001年度中に稼動予定である。既存VANによる発注は現在企業数にして40%、伝票数にして60%が実施されているが、小取引先をグループ化し、商社を利用する等して2001年度中に100%VAN化する計画である。

これらの企業では、引合いのオープン化、コストダウン、リードタイム短縮等がNet購買のメリットであるとしている。

(2)発注情報の交換にNetを活用している例

図2.3)発注情報の交換にNetを活用している例

これは、発注情報の交換にNetを活用している例である。インターネットEDIといえるものであり、e-ビジネスの事例とは厳密には言えないものであるが、中小サプライヤーをNet取引に巻込んだ事例として、中部地区を拠点とするC社を紹介する。C社の概要は以下の通りである。

 業種:OA機器、機械製造業

従業員数:3,800人

C社の場合、部品・材料の発注情報をセキュリティが確保されたインターネットを介して、納入業者(セラー)へ配信している。従来、大手の取引先とはVANを利用したEDIにより、発注データの配信を行っていたが、インターネットを利用したEDIも利用することにより、中小の取引先へもEDI化が可能となった。2000年4月現在、EDI化率は全発注件数の95%であるという。これはインターネットを利用することにより、セラー側は通常のパソコン程度の軽微な投資でEDI化が可能となったためである。残りの5%はFAXサーバーの利用により、C社からの配信データをFAXにて取引先(セラー)へ配信している。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その3

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その3

第2章 e-ビジネスの分類(バイヤー発注システム事例)

 B2Be-ビジネスの類型化について概説する。まず、基本的な3類型である、バイヤー型、マーケットプレース型、セラー型を提示する。次に中部地区の現状として大手企業の主催するバイヤー型ネットワークの事例を紹介する。最後に、B2Be-ビジネスの内在する問題点と方向性への示唆を考察する。

1.B2Be-ビジネスの類型化

 B2Be-ビジネスをそのネットワークの形態として類型化する。これは買い手(バイヤー)と売り手(セラー)の関係においてどちらが主催しているネットワークなのかという視点での分類とみることもできる。本報告書では、但し書きが無い限り、情報ネットワークのための通信回線網とその運営システム(以下Netと略)をインターネット上に展開されるものと想定する。

図2.1. B2Be-ビジネスの類型

(1)バイヤー型ネットワーク

図2.1. B2Be-ビジネスの類型;

a)バイヤー型ネットワークに示すモデルは、ひとつのバイヤーと複数のセラーがNetを介して結ばれた形態である。この形態においては、おのずとバイヤーは複数のセラーが参加するに十分な購買力を保持していなくては成立しない。従って、この形態の例として、バイヤーである大手製造業とセラーである部品、材料等のサプライヤーとの形態が考えられる。Netの主催はバイヤー側である。従来のVANによる固定的なネットワークの延長線にあたるものであり、Netを利用することにより取引先の範囲を不特定多数に拡大しようとするものである。

(2)マーケットプレース型ネットワーク

図2.1. B2Be-ビジネスの類型;

b)マーケットプレース型ネットーワークに示すモデルは複数のバイヤーと複数のセラーがNetを介して結ばれた形態である。この形態においては、それぞれのバイヤー、セラーの規模は小さくても、それぞれの取引き能力に合せた規模によりネットワークが成立する。Netの主催は基本的に、バイヤー側でも、セラー側でもなく中立な立場の者が行うと考えられるが、セラー寄りあるいはバイヤー寄りのNet主催者も存在する。

(3)セラー型ネットワーク

図表2.1. B2Be-ビジネスの類型c)セラー型ネットワークに示すモデルは、ひとつのセラーと複数のバイヤーがNetを介して結ばれた形態である。この形態においては、おのずとセラーが大きな販売力を保持していなくてはならない。Netの主催はセラー側であり、セラーは大手企業でバイヤーは中小企業であることが多い。中小製造業の関与としては、大手の原材料サプライヤーと多数の中小製造業が取引きしている形態などが想定できるが、一般的には製品メーカーと卸業者間、卸業者と小売業者間といった流通分野であることが多い。今回の調査では事例は取り上げなかった。(1)バイヤー型ネットワークと同様に、従来のVANによる固定的なネットワークから、取引先の範囲を不特定多数に拡大しようとするものである。

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その2

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その2

第一章 e―ビジネスに関する社会的環境

1.拡大するインターネット

  インターネットの普及は、平成12年版通信白書によると1999年にはすでに2,706万人に達し、2005年には7,670万人と予測されている。さらに、最近では、携帯電話によるインターネットの利用も爆発的に伸びている。

  インターネットは、当初の情報発信や情報収集の時代を過ぎて、インターネットをツールとして各企業がビジネスにいかに使うか、どのようなビジネスが新たに展開できるかを実験している段階である。インターネツトが大きなビジネスチャンスを生むと考えられ、世界的に新しいインターネットビジネスの拡大が予測されている。

  「IT革命」が流行語になり、インターネットに代表される情報技術を使って各企業は自社のビジネスモデルを追求している。

政府においても、インターネット上での電子商取引(Electronic Cmmerce)についてのルールを定める「電子契約案」(仮称)を2001年1月の通常国会に提出する方針を発表した。契約書が取引先に届いた時点で契約とみなす「到達主義」を採用することや、販売側に契約商品の確認義務を課すことなどである。

2.e―ビジネスの出現

  インターネットは新しいビジネスのツールとしてみなされ、従来の取引に変わってインターネット上での電子商取引が活発になり、e―ビジネス(または、e―コマース)と言われるようになった。このe―ビジネスは、その取引形態から、企業と消費者間の取引をあらわすB2C(注1)と、企業と企業間の取引をあらわすB2B(注2)に大別される。

  B2Cは、本を販売して有名になったアメリカの某ドットコム社始め、日本にも多くの会社が出てきており、一般消費者に向けていろいろな商品を販売するビジネスの形態である。B2Cは、主に企業がショップと言われるホームページを開設し注文を受けるオンラインショッピングで、衣料・雑貨・パソコン・食品など広範囲にわたっている。その規模は「日米電子商取引の市場調査」(通産省)報告によると、1999年に3,360億円から2004年には6兆6,620億円に達すると予測されている。

一方、さらに大きな規模で拡大が見込まれる市場がB2Bである。

3.B2Bの市場

  日本では始まったばかりの分野であるが、アメリカではすでに活発な動きが見られる。「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料によると、日本国内のB2B市場規模は、図1.1にあるとおり、1999年には12兆円が、2003年には68兆円と見込まれている。

 B2Bはあらゆる分野で浸透すると見込まれる。「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料において、2003年には、電子・情報関連製品が21.0兆円に、自動車・自動車部品が17.5兆円と予測されており、これらの製造業を中心に積極的に電子商取引は取り入れられると考えられている。

 B2Bの先進国のアメリカにおいての象徴的な出来事は、2000年2月に発表された自動車のビッグスリーの3社による部品の調達構想である。

 B2Bが注目される点は、企業間の取引を単に電子化するのではなく、従来のビジネスのやり方や業種・業界の枠組みを大きく変革する力を持っているからに他ならない。

 大手企業が従来から行ってきたEDIをインターネットの方式に切り替えることにより、業務の効率化とスピードアップを図る。また、インターネットを通して、在庫状況や生産計画などの情報を共有化することで企業間の連携が図れる。これが、現在の企業で多く取り入れられているB2Bの形態である。

 最近では、従来からの系列取引(企業グループ取引)に変わって、インターネット上に情報を公開してネット調達を行う動きが出てきた。日本においては、自動車や電機の代表的なメーカーが一斉に動き出している。そのメリットは、各社ともこれまで取引のなかった企業と取引することで、より安い価格と短い納期で部品・材料が調達できると見ているからである。

 各企業が行うインターネット調達と並んで注目を集めているB2Bに、インターネット取引所(マーケットプレース)がある。マーケットプレースは、1998年ごろからアメリカで爆発的に広がり始めた形態で、製品の売り手と買い手を結び付ける場所を電子的に提供する。メーカーは従来の系列取引からオープンな企業取引が出来、安く調達することが可能になる。部品などを販売する企業にとっては、従来出来なかったメーカーとの取引の可能性が出てきた。

                       図1.1 日米B2B電子商取引市場規模

出所:「電子商取引実証推進協議会とアンダーセン・コンサルティングの調査」の資料より  

     (注1) B2CのBは企業(Business)であり、Cは消費者(Consumer)

 である。すなわち、企業対消費者間の取引を現す場合に使われる。B2Cの‘2’は企業から消費者への意味で従来toを用いていたが、最近は‘2’を使うことが多くなった。したがって、本報告書では、‘2’を使っている。

      (注2) B2Bは、B2Cと同様な表現方法であり、Bは企業を意味しており、企業間取 

 引を表現するときに使われる。