下請法の活用

今回はいかに下請法をうまく活用するかの例を書きます。

以前私が、中小企業の生管・購買を担当していた時ですが、

顧客から有償支給部品を支給してもらってそれらを自社で組み付け、機能検査を実施してOKなら出荷し、機能検査でNGなら原因を調べる、支給されている部品が悪いのなら顧客へ返却できるが、支給されている部品が悪いと証明できないと返却できないとなってました。

ただし、支給される部品について支給管理費を売価の中でいただいていました。

それを下請法違反に当たるのではないかと思い、インターネットで申告しました。

しかし結果は「下請法違反には当たらず。」でした。がっくり。

事情があり私はその会社を自主退社しました。次に後輩が同じ顧客に対して、下請法違反を申告しました。

内容は、顧客へ原材料が値上げとなり、顧客へ対しても営業を通して値上げ申請をしていましたが、1年たっても、のらりくらりとされて認められない。既に材料費は上がってしまているのに。

そこで後輩は、「材料費が上がって顧客の〇〇〇会社△△△さんへ申し入れをしているが一向に認めてもらえない。」

と「買いたたき」の違反事例として具体的に名指しで、書面で投函した。

すると、1年以上のらりくらりしていたのが、投函後2、3ヶ月で、全面顧客が値上げを認めた。

なるほど、違反事例と同じような内容であり、名指しが威力あるんだ!

内容的には、使えない有償支給品を買わせる方が悪どいが、違反事例としてないから残念だ。

下請法違反:買いたたき

最近、実際に経験している下請け法違反は「買いたたき」です。

お客さんからの見積依頼で見積数に対する価格回答をしているにも関わらず、それよりずっと少ない数で勝手に発注されてくる。

A顧客から12個の場合の価格見積依頼が来て、〇〇〇円で回答すると、後日、1個の発注数で見積回答した価格と同じ〇〇〇円で発注されてきた。

A顧客に確認すると、「わかっている。残り11個を発注しないわけではない。毎月1個発注するので1年で12個になる。」

えっ。ありえない。おまけに当製品の材料はA顧客からの支給なので、支給材が届かなければ加工もできない。支給材が届くまで、当製品を段取りした状態で維持しとけか。専用ラインでもないのに。ありえない。

教科書の事例に出てくるような明らかな買いたたきの下請法違反である。

またB顧客は、見積数144個で×××円で回答しているのに、約半分の70個で×××円の注文書を勝手に出してきた。当社がそのまま×××円で受注しても、当社から70個で×××円の見積を出していなければ、これも買いたたきの違反となることを知らないのか。受注企業が了承しようがしまいが、受注企業からの見積を入手していないのが問題。

乱れている。

新たな下請法の抜け道

今納入しているお客様にて今までにない方法で、新たな下請法の抜け道の方法が出てきました。その内容を書きます。

お客様から無償支給で材料を支給していただきそれを加工して納入しております。

製品の大きさは手平サイズで寸法公差も簡単ではないがそれほど難しくない程度です。

材料をお客様から無償支給されているので、加工して不良となった場合は客様に材料とともに加工品を返却します。当たり前のことと認識しております。

加工品は当然、寸法検査をします。1ケ所どこでも、ちょっとでも図面規格から外れていたらNGとして不良品あつかいし、材料とともにお客様へ返却しております。

寸法検査し、ここの一部分は、ここは一般公差なのでこれぐらいはと思っても測定結果でNGの箇所があったら不良。例えば、はめ合い公差φ30H深さ42であるところ入口から深さ4mmの所までが、φ30.05(+0.013内径が規格より大きい)となってしまい手直しもできずNG。お客様の受入検査で発見され、使えると思うが不良品として、お客様へ返却。

そして、その返却品をお客様の所で破棄していると思っていました。

しかし、どうやら使っているようです。

えっ! 次の発注の数が減っている。

無償支給の材料を加工した不良品だからお客様へ返却するのは当然。お客様へ返却した後の処置はお客様が決める。納入業者があーだーこーだと言う権限はない。

しかし、それを使えるから、代金を支払わず使いまわすのはさすがに....。

下請法のどれに当たるか見てみるが、どれにも当たらない。うまいやり方だ。

文句も言えない。検査を重箱の隅をつつくようにとても厳しくして、NG箇所を見つけ不良品とさせる。

書面の交付義務:発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。

支払期日を定める義務:下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。

書類の作成・保存義務 :下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。

遅延利息の支払義務 :支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

受領拒否:注文した物品等の受領を拒むこと。

下請代金の支払遅延:下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。

下請代金の減額:あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

返品:受け取った物を返品すること。

買いたたき:類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

購入・利用強制:親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

報復措置:下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

有償支給原材料等の対価の早期決済:有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

割引困難な手形の交付:一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

不当な経済上の利益の提供要請:下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。

不当な給付内容の変更及び不当なやり直し:費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

有償支給品の相殺 事例2

もう一つの事例を書きます。

J社から有償支給されている素材は支給元のB社から自社へ直送されてます。

支給される仕組みは、J社が運営しているWebに、自社から支給して欲しい品番と希望数と希望納期を入力します。

するとB社が出荷数と、出荷日を入力します。これで、B社のJ社に対する売上検収とJ社から自社への支給検収が計上されます。

そして実際の素材をB社から自社へ現品票と一緒に直接輸送されてきます。

しかし、ここで落とし穴があります。B社がWeb上に出荷数と出荷日を入力したのと、実際の物の支給された数が少ない。しかし、すでにB社の売り上げ売り上げ検収が済まされ、自社への支給検収も済んでいる。J社は購入し支給するだけなので金額の影響はほぼなし。

B社は空売り上げとなり、自社は空支給され、たまらん。

この件も中小企業庁に問い合わせしたが、

「下請法の違反に当たらない。」

えっ

J社は有償支給に対して支給先に確実な不利益な扱いをしているが、今の下請法では是正ができない。残念だ。

有償支給品の相殺 事例1

今回は下請法の有償支給について、自社がかかわった実績を書きます。

下請法の中で有償支給を明記した項目は、

親事業者の遵守事項⑨~有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

がありますが、今回は自社がかかわった特殊な事例です。

自社は顧客のJ社より部品を有償支給を受けています。

有償支給品の相殺は1ケ月後になっています。例えば1月に支給されそれを使って1月にJ社に売り上げをしたら、売り上げの検収は1月にされ、支払いは2月の末にされますが、1月に支給された有償金額は1ケ月相殺を遅らせ、2月の売り上げから相殺されており、上記の 「有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止」は守られています。

しかし、 今回の事例は当内容と異なります。

J社から5つの部品を有償支給され自社で組付けし機能検査を実施して良品を出荷しておりますが、

この有償支給部品を組み付けて機能検査したら不合格になるものがある。

それを、J社に申し入れし返却しようとしたら、組付けた後は、部品の寸法が変わっている可能性があるので、返却はできない。

えっ

不良品を支給され組み付けてNGなってもJ社は責任を持たない。全て自社負担となっている。

これを中小企業庁に相談したところ、なんと

「下請法の違反にあたらない。」

と驚きの回答がった。これまた

えっ

信じられなかった。

下請法の受領拒否

下請法の取り組みについて具体的に一つの事例を上げます。

下請法は親事業者の4つの義務と11の禁止行為がありますが、

今回はその中の「受領拒否」の例を上げます。

下請法の受領拒否

親事業者は注文したら物品を買い取らなければならない。下請事業者に責任がないのに、注文した物品などの受領を拒むと違反になります。

なお、「書面の交付義務」と深い関連があります。特に”注文書”の交付義務です。

例1)親事業者Aの顧客からオーダーがキャンセルされても、親事業者Aは下請けから発注した物品を買い取らなければならない。
つまり親事業者Aは在庫を自社負担で持つ事になり、その在庫がいつ売れるかもわからない状況になります。

なお、震災などの事故の時は特に指摘はされないないが、下請事業者が申しいれすれば「受領拒否」の適用となります。下請駆け込み寺などに申し入れすれば違反取り締まりの対象となる。

例2)一度出した注文書はたとえ間違っていても取消は出来ない。親事業者Bは100個買いたかったのに誤って10,000個の注文書を発行して、発行後に直ちに誤りを気付いてキャンセルをしようとしてもキャンセルはできない。ただし、追加のオーダーはできます。

例3)100個の注文書を出したら100個買い取らなければならない。99個の購入では1個の受領拒否となる。
では少なめに注文書を出して必要時に追加のオーダーすれば良いのだが、注文書の「書面の交付義務」があり口頭発注でも良いが後で必ず注文書を出さなければならない。
しかし、超短期納入の注文書となる場合は下請事業者からは納入できる出来ないなどの問題や、超短期納入によるコストアップについては認めないと「買いたたき」の違反対象となります。特に最近は、「買いたたき」について重点的に調査および指導をしているようです。

例4)月次の注文書(確定内示ともいいます)を発行し日々の納入はカンバンなどで調整している場合はプラスマイナス10%以内の差異は認められます。ただし、カンバンを発行した分は買い取らなければならないです。その場合の月次の注文書は日々の納入数の記載も必要です。

このように「受領拒否」だけでもめんどくさい法律です。

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下請法の資本金規模と取引内容

下請法​(下請代金支払遅延等防止法)

前回に続いて下請法​(下請代金支払遅延等防止法)につて経験の一部を記録に残します。

下請法の対象となる取引事業者の資本金規模取引の内容で定義されてます。

(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合

(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合の模式図

(2)情報成果物作成・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く。)

(2)情報成果物作成・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く。)の模式図

と公正取引委員会や中小企業庁​​などのホームページで説明がありますが、下請けをする中小企業を支援する法律です。
まず自社が、下請けをしている資本金3億円以下の下請事業者であるか、次に仕入先へ下請けを出している親事業者であるか確認してください。

しかし、親事業者Aが業務効率化のため資本金が小さい(例えば1千万円の)子会社Bを使い、下請事業者Cに下請けを委託しても、ただのトンネルの場合は、親事業者Aが親事業者として下請法の適用になります。

下請けとは製造業であれば、図面を仕入先で作成していれば、下請けとはならないと判断するのが簡単でしょう。

下請法に違反した場合は、遅延代金を利息をつけて下請事業者に支払うことなります。(下請法の違反だけでは刑事罰は無いです。)
金額的にはインパクトは少ないですが、改善をしないと公開され社会的に制裁を受けるのがダメージが大きいです。
それでも改善をしないと悪質とみなされ独占禁止法(独禁法)の違反となります。

下請法を遵守するには購買部署だけが取り組むのではなく、実際に発注する部署、受け入れする部署、コンピューターシステム部署およびトップの理解が必要で全社的な取り組みが必要ですが、世間的に認知度が低く社内の協力が得られにくいのが問題です。いかに関連部署にも認識させ協力を得るかがキーとなります。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)について

私が取り組んだ業務の一つで下請法の遵守の推進をした経験の一部を今回はブログに残します。

まず下請法の正式名は「下請代金支払遅延等防止法」といい、正式名の通り下請代金の支払いを遅れさせないことに関係する事項を含めた法律です。世界では競争法(Competition Law)がありますが、日本では通称「下請法」と独自の名称として使われてます。

親事業者の4つの義務と11つの禁止事項

があります。

当「下請法」は親業者にとっても下請け業者にとっても、とても厄介で中途半端な法律といわれることもあり、私も日本でかかわった時には同じように愚法だと思っておりましたが、私の会社が海外に進出した時に日本の下請法があることが、日本では下請け会社にはとても守られていることを実感しました。

海外で経験したのは、下請け取引において顧客からの

1)継続品の一方的な値下げ
・根拠なし
・一律%の要求
2)妥結しないと代金を支払わない
・新規品
・継続品も支払い停止
3)価格を妥結した時の数量から大幅に少なくなっても価格見直し要請しても応ぜず
4)納入後、受け入れ検査基準が厳しくなり(特に外観)
5)短納期、急な増産要求
・遅延した場合は、特車の自己負担およびペナルティ
6)購買担当者の知り合い業者からの購入指示
7)口頭発注し、注文書発行せず
8)発注の取消し
9)有償支給品の早期決済(当月相殺)

などこれら日本の下請法に照らしたらどれも違反な内容ですが、
海外では当たり前のように実行されていました。たまらんです。

これらが下請法のどの法律に違反しているか一つ一つの説明は別途個々に記録していきますが、
日本での​違反事例​​は公正取引委員会のホームページにアップされていますので参考にしてください。

参考書籍は↓↓↓