労災事故の損害賠リスクに関して上乗せ保険の重要性について書いていきます。 その8
損害賠償額の試算事例ケース1の続き。
(注1)逸失利益について
被害者が死亡しなければ,その後の就労可能な期間において得ることができたであろう収入に対する損害
[計算式]
基礎収入×(1-生活費控除率)×中間利息控除(ライプニッツ係数)=逸失利益
(1) 基礎収入
若年労働者(概ね30歳以下)の基礎収入は,① 年功序列的賃金体系が採用されていることが多いこと,② 将来の昇給可能性等を考慮して,賃金センサスによる賃金センサスが採用される。
→ 本件でも,被災労働者の現実収入(4,014,000円)と賃金センサスによる平均給与額(産業計/企業規模計/男性/大学・大学院卒:6,637,700円)を比較すると,平均給与額の方が高額である。
∴ 6,637,700円
※1)基礎収入としては663万円。平均賃金と言うが大卒の社員の方がだいたいこれぐらい貰える金額になっている。
この金額は現実収入と比べると倍近い金額になっておりおかしいと言われる方がいるが、若年の労働者、概ね30歳以下の方は、今後昇給して行く可能性があるので裁判事例では賃金センサスを採用される。今安いけれども、今後年をとったら上がってくる。
(2) 生活費控除率
生活費控除率は,被災労働者の家族構成等を勘案した上で,30%から50%の範囲内で認定される。
→ 独身男性の場合,生活費控除率を50%と認定するのが裁判実務の大勢である。
∴ 50%
(3) 中間利息控除
逸失利益は,将来にわたる稼動収入を現時点で賠償するものである。このため,中間利息を控除する必要がある。裁判実務では,就労可能年数を67歳までとし,同年齢までの稼動収入に対応する中間利息を控除する。
→ 本件では,被災労働者は死亡時24歳であったことから,67歳までの43年間にわたる稼動収入が逸失利益の対象である。
→ 43年分の中間利息を控除する必要があるところ,これに対するライプニッツ係数は,17.546である。
∴ 17.546
※1)この例の方の場合24歳だから、60歳、70歳になるまで、今後得られたであろうお金を今もらうとなると、例えば30年後の100万円と今の百万が同じ価値かというと、異なります。そこを適正に評価をされるのが中間利息控除と言う。
(4) 計算式
6,637,700円×(1-0.5)×17.546=58,232,542円