中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その27

中部地区中小製造業におけるB2Bネット取引の現状と課題 その27

2)バイヤーの立場からの課題と提言

今、大手企業の購買担当者が囁いていることに、“営業マンには常時、来てほしくない。”がある。 1日に営業マンが何人も来るので購買担当者がオフィースワークを始めるのは定時以降になってしまう。営業マンの話の半分は世間話であることが多い。できる限り、営業マンを介さずに購買をしたいと購買担当者は願っている。インターネット購買は“短い時間で購買の仕事をこなしたい”という購買担当者の欲求を満足させてくれる。米国の大企業では3-4年前からすでにインターネット購買が普及し、短い時間で多くの購買件数をこなしている。そしてインターネット購買の経済性を次のように計算している。1人のバイヤーが1年間に取り扱うことができる購買件数を出して、バイヤーの年俸を購買件数で割る。つまり、1件の購買にバイヤーの給与がどれだけ掛かっているかを計算する。目標とすべきは1件あたりに費やすバイヤーの時間を削減することであり、それによって購買費用を削減しようとするのである。インターネットを活用すればバイヤーは購買に至る種々のプロセスにおいて拘束される時間が少なくてすむので、(電話しない、相手と会わない、出かけることが少ないなど)インターネット購買の経済性は立証される。バイヤー1人あたりの1年間の購買取扱い件数が増加すればするほど、インターネット購買はコスト削減に多大な貢献をしているといえる。大手企業に出入りしている中小企業はこの点を充分考慮する必要があるだろう。インターネット購買に対応できないため、受注ができないという日がくるかもしれない。

インターネット購買には部品点数の削減と標準化も欠かせない。部品点数の削減と標準化は常に心がけるべきことであって、インターネット購買をするからといってするべきことではないが、インターネット購買を成功させようとする場合はぜひ、実施しなければならない項目である。

インターネット購買をするには、業界紙などを定期的に購読し、その業界の全体像を知ることが重要である。そうすることによってネット上に現れる企業の適否をはかる自社なりの基準を持つことができる。

3)バイヤーとセラーの両方で考慮すべきこと

インターネット購買を推進する前にコスト管理について実施しておかなければならない事がある。日本の下請け分業構造においては、特定の顧客と取引が継続しているのでセラー側が請求しない、表に出ていない購買費用がある。たとえば仕様変更に伴う修正費用、輸送費、在庫保管費用などである。インターネット購買をしようとするとこの状況は具合が悪い。インターネット購買の一番大きな特色の1つは広く購買する企業を求めることである。この“広く”については “より多くの企業の中から”と“海外も視野に入れたより広い地域の中から”の2つの意味がある。そしてその都度、購買コストについて折衝するわけだから、購買コストの項目を明確にしておかなければならない。購買コストには購買物そのものの価格(修正費用を含む)と輸送費、受け入れ費用、在庫費用、リスク費用等がある。今までのように購買物そのもののコストダウンを考慮するだけでなく、購買に掛かる総費用を合計し、購買総数量で割り、総ユニットコストを出して管理し、ユニットコストダウンを実行しなければならない。すなわち購買コスト全体を考慮した緻密なコスト管理が必要になる。インターネット購買に本格的に参入する前に企業は自社の購買コスト構造を分析・細分化しなければならない。さもなければインターネット購買をしてコストダウンになったのか、ならなかったのかを知ることはできない。

インターネット購買によってお互いの企業の在庫状況を開示する場合は、在庫の評価方法・時期を同一にしなければならない。その他にもインターネット購買を運用していく上で、バイヤーとセラーが協調しなければならないことがあるだろう。

 現時点ではインターネット購買は大きな成果もでていないが、インターネット購買、営業を軽視するということではない。2005年にはインターネット人口が現在の3倍弱になると予想されている。インターネット環境が多くの企業で整備されれば、インターネット購買・販売は加速して増加していくに違いない。ホームページの配信などを行い、インターネット購買・販売のノウハウを蓄積し、最低限の準備を済ませておくことが重要である。

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