モノづくり企業の改革の必然性とその戦略 その8

奥田 碩 さんの講演内容です。

(2)人の交流

それに加えて、資本、ビジネス以外の部分での人の交流も、重要なポ イントです。たとえば、留学生や研究者といった人たちの交流です。海 外から優秀な研究者や留学生を受け入れることは、わが国の研究のレベ ルアップに直接つながることであり、また、留学生がそのまま日本で就職してくれれば、わが国経済にとって貴重な戦力になるのです。

逆に、わが国から海外に人材を送り出すことも、同様に重要なのです。 「頭脳の空洞化」を心配する意見もあるようですが、こうした人たちに よって海外からわが国にとって非常に貴重な新しい情報、優れた技術が もたらされるメリットのほうが大きいと考えたいと思います。また、こうした人たち一人ひとりの能力が向上することにより、わが国の人材が より多彩となり、厚みを増していくのではないでしょうか。

さらに、ビジネスや研究ではない、遊びの部分での人の交流、すなわ ち観光客の呼び込みが、これからはたいへん重要な課題になります。

わが国は、四季折々に美しい豊かな自然をはじめ、文化や歴史に裏付 けられた数多くの観光資源を有しているにもかかわらず、わが国から海 外に観光に出かける人が年間 1、000万人をはるかに超えるのに対し、わ が国に観光に来る外国人は年間500万人にも満たないのが現状です。要 するに、日本人は世界中に遊びに行っているのに、日本はハード、 ソフ トの両面で、外国人に観光を楽しむ場を提供できていないのです。

外国の資本や人材を日本に呼び込もうとしたとき、その判断は、必ず しも経済的要因ばかりで行われるとは限らず、経済以外の部分で日本の ことを知っているかどうか、日本や日本人に好感をもっているかどうか といったことが、時には経済的要因と同じように重要になることもあり ます。そういう意味で、日本シンパ、日本ファンを世界に増やしていく ことが重要であり、そのためには、観光客を増やすことが、まずは入口 になるでしょう。 さまざまなインフラや環境を整備するとともに、すべての日本人が外国人観光客を心から歓迎する気持ちをもつことで、人の 交流を拡大していけば、単なる経済効果以上のものが期待できるはずで す。

2002年に開催されましたサッカーのワールドカップでは、多くの外 国人が日本を訪れ、日本に対してよい印象をもってくれた人、日本に来る前に較べて日本を好きになってくれた人も多かったと思います。このような国際的なイベントを国民をあげて成功させていくことは、世界に 日本ファンを増やすことに直結させることであり、わが国の次なる国際 的イベントである万博、「愛・地球博」も、国をあげて成功させていか なければならないのです。

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